32のグラフ: 絶滅危惧種の保全 (P81)

第2章固定リンク

国際自然保護連合(IUCN)が作成したレッドリストには、8万7967種(動物、植物、菌類)が登録されており、絶滅のおそれの度合いが記されている(IUCN Red List[4])。このうち、2万5062(約285)が「絶滅危惧」とされている(絶滅寸前 (CR)、絶滅危惧 (EN)、危急 (VU))。

多くの種において状況は改善していないが、少なくとも絶滅の危険度が計測されるようになったというのは良いことだ。2000年以降の数字は最新のレッドリストによるもの(Red List[4])。それ以前のデータは1986年1990年1996年のレッドリストを参考にしている。

世界ではじめて絶滅危惧種を記録しようとした取り組みは1959年の"Threatened Mammals Card Index"だ。34の哺乳類のデータを集め、Leofric Boyleの指揮のもとThe Species Survival Commissionが記録した。

質問11: 絶滅危惧種も参考のこと。

訳者による補足: 勘違いしてはいけないポイントだが、国際自然保護連合のレッドリストには、絶滅とはまったく縁がない種も登録されている。だから、「レッドリストに載る数が増える=悪いこと」ではない。むしろ良いことでしかない。

上記の画像は「IUCNレッドリストカテゴリーと基準 3.1版 改訂2版」からの引用。この図にもあるように、絶滅とはまったく縁がない種は「低懸念」に分類される。

たとえばレッドリストには、日本で最もよく見るカラスである「ハシブトガラス」や「ハシボソガラス」も登録されている。もちろん両方とも「低懸念」だ。レッドリストにはなんと「人類」も登録されており、もちろん分類は「低懸念」だ。

32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。

質問11: 絶滅危惧種 (P12)

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1996年には、トラとジャイアントパンダとクロサイはいずれも絶滅危惧種として指定されていました。この3つのうち、当時よりも絶滅の危機に瀕している動物はいくつでしょう?

  • A2つ
  • Bひとつ
  • Cゼロ

正解はC。国際自然保護連合が作成したレッドリストによれば、3つの動物のうち、1996年よりさらに絶滅の危機に瀕している動物はひとつもない。

レッドリストのこちらのページには、1996年から2017年の間に、絶滅の危機に瀕している動物の数がどのように変わったかを表すチャートが載っている。

トラ (Panthera tigris): レッドリストによると、1996年にEN(絶滅危惧)と指定された。現在もそのままだ。世界自然保護基金(WWF)は、野生のトラの数は増え続けているという声明を2016年に発表した:「以前、野生のトラの数は100年にわたって減り続けていたが、最近は増え続けている。現在、野生のトラの数は最低3890頭。だが、トラはいまだに絶滅危惧種であり、さらなる保護の努力が求められる」。トラの数が増えていることは、Scientific Americanに掲載されたPlatt (2016)の記事も参考のこと。

ジャイアントパンダ: レッドリストによると、1996年にEN(絶滅危惧)と指定された。だが、以来野生の数は増え、2015年には保全状況がVU(危急)に改善した。

クロサイ: レッドリストによると、1996年にCR(絶滅寸前)とされていて、現在も変わらない。ただ、国際サイ財団によれば、野生のクロサイの数は2016年には5042〜5455頭だった。その数はゆっくりと増えており、2018年3月の段階でもまだ増え続けている

訳者による補足: ここでは論拠にレッドリストの保全状況が使われているが、保全状況の分類は1996年を境に変わっている。 これについては、1996年のレッドリストのIntro p17を参照のこと。1996年より前のレッドリストの分類については、1990年のレッドリストのxxiiページを参考のこと。

たとえば、トラの分類は以下のように変化している:

  • 2015 - Endangered (EN)
  • 2011 — Endangered (EN)
  • 2010 — Endangered (EN)
  • 2008 — Endangered (EN)
  • 2002 — Endangered (EN)
  • 1996 — Endangered (EN)
  • 1994 — Endangered (E)
  • 1990 — Endangered (E)
  • 1988 — Endangered (E)
  • 1986 — Endangered (E)

このように、1996年を境に、Endangeredが"E"から"EN"に変化している。分類方法が変わると比較ができないため、現在と分類方法が同じ1996年を起点に質問を考えたのだと思われる。

ちなみに、ジャイアントパンダの分類は以下のように変化している。1988年に使われていた「Rare」という分類はもう存在しない。

  • 2016 - Vulnerable (VU)
  • 2008 — Endangered (EN)
  • 1996 — Endangered (EN)
  • 1994 — Endangered (E)
  • 1990 — Endangered (E)
  • 1988 — Rare (R)
  • 1986 — Rare (R)
  • 1965 — Unknown ( NA)

クロサイの分類は以下のように変化している。1994年以前は、絶滅(Extinct(Ex))のひとつ直前の分類はEndangered(E)しかなく、現在のようなCritically Endangered(CR)とEndangered(EN)の違いはなかったため、比較ができない。

  • 2012 - Critically Endangered (CR)
  • 2011 — Critically Endangered (CR)
  • 2008 — Critically Endangered (CR)
  • 2003 — Critically Endangered (CR)
  • 2002 — Critically Endangered (CR)
  • 1996 — Critically Endangered (CR)
  • 1994 — Endangered (E)
  • 1990 — Endangered (E)
  • 1988 — Endangered (E)
  • 1986 — Endangered (E)
  • 1965 — Unknown (N/A)