2017年のデータがない経済指標は、おもに国際通貨基金による世界経済見通し(IMF[1])をもとにギャップマインダーが算出した。2017年の人口のデータは、2017年度の世界人口予測(UN-Pop[1])をもとに算出している。
『ファクトフルネス』
ウェブ脚注
『ファクトフルネス』共訳者(上杉)作成
これは、2019年1月に日経BPから発売された訳書『ファクトフルネス』のウェブ脚注(バージョン4)の日本語訳です。
本のp353〜p373にも21ページの脚注がありますが、こちらは拡張版です。文字数にすると、本の脚注は約2万5000文字なのに対し、このウェブ脚注は7万文字以上あります。
原文の冒頭には、以下のように書かれています:
『ファクトフルネス』の巻末には、本書の事実に関する脚注を載せていますが、さらにこのページへのリンクも貼っています。こちらのページのほうが詳細や参考文献が充実しています。
『ファクトフルネス』に書いてあることは、最も信頼できるデータが基になっているべきです。しかし、わたしたちはすべての分野に精通しているわけではありません。本書で使われている参考文献より正確な文献や、違う立場の文献を、あなたはおそらくご存知だと思います。『ファクトフルネス』のファクトを改善し、将来の改訂に役立てるために、こちらからフィードバックを送ってくださると嬉しいです: gapm.io/feedback
補足事項
- これは、ギャップマインダー財団が無償で公開している文章の翻訳です。(ライセンスはCC-BY 4.0)
- 原文のウェブ脚注の冒頭には、以下のように書かれています。「このページは未完成です。いまでも連日、本書を読んでくださった方からたくさんの声が届いています。数ヶ月以内に再び更新する予定です」
- 本書の脚注の文章を使っている場合は、このように下線で記しています。下線がない部分は、すべて本書の共訳者の上杉周作が訳しました。
- 訳者(上杉周作)による訳註や補足も一部追加しています。その際は「訳註」または「訳者による補足」と明記しています。
- 出典は、本書の「出典」部分に掲載している略称を用いています(UN-Pop[1]など)。
- この脚注に誤字脱字がございましたら、共訳者の上杉(shu.chibicode@gmail.com) までご連絡ください。この脚注、あるいは本書で該当する部分のファクトに間違いがあった場合も、ぜひご連絡ください。 それぞれ吟味したのち、必要に応じて原著の著者に転送させていただきます。原著の著者に直接英語でフィードバックを送るには、こちらから: factfulness-book@gapminder.org。
- 右上の「固定リンク」をクリックすると、ひとつの脚注だけを表示することができます。また固定リンクのURLの
?p=
を?s=
に変えると、iframe
で使える埋め込み用URLになります。
その他のデータ
ギャップマインダーのサイトには、本書で使われているデータについてさらに詳しい説明が書かれています。どちらかというと一般向けではなく、研究者向けの内容です。これらは訳せていませんが、以下にリンクを貼っておきます。
たくさんありますが、訳者(上杉)がどれかひとつおすすめするとしたら、所得レベルのデータについてのページです。所得レベルごとの人口がどのように計算されているかが書かれています。
正誤表
本書の正誤表も公開しています。こちらからご覧ください。
全般・見返し・はじめに
世界保健チャート(2017年版)
見返し固定リンク
この本を開いたとき、最初に読者が目にするのはカラフルな世界保健チャート(2017年版)だ。国連加盟国のうち、バチカン市国など、人口が極端に少ない国を除く182カ国を掲載している。それぞれの丸は国を表している。丸の大きさは人口、色は地域に対応している。
ギャップマインダーはすべての国を地域ごとに4つに分類し、それぞれ色分けしている。アメリカ大陸は緑、アフリカは青、アジアとオセアニアは赤、ヨーロッパは黄色だ。グリーンランド、ロシア、一部の中央アジアもヨーロッパに分類している。どの国がどの地域に属すかはこちらに書いている。
横軸はひとりあたりのGDP(購買力平価ベース、2011年国際ドル)を表している。ギャップマインダーが定義した4つの所得レベルと、対数目盛を利用している。縦軸は平均寿命を表している。人口のデータはUN-Pop[1]、GDPのデータはWorld Bank[1]、 平均寿命のデータはIHME[1]によるもの。上記の通り、一部の2017年のデータはギャップマインダーが算出している(Gapminder[2]、Gapminder[4])。
このチャートはこちらからオンラインで無料で閲覧できる。
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「購買力平価」と「極度の貧困」
全般固定リンク
訳者による補足: 脚注では「購買力平価(PPP)」「極度の貧困」という言葉が何度も使われている。どちらも世界銀行が使っている言葉だ。世界銀行はこれらの用語の説明を日本語で公開しているので、こちらに引用しておく。リンクはこちら: 世界の貧困に関するデータ
Q4. 購買力平価(PPP)とは何ですか?どのように決定されるのですか?
A4. PPPを使うと、各国の所得や消費のデータをグローバルに比較できる数字に転換することが可能です。PPPは、世界各国の物価データを基に割り出されます。その年のPPPを決定する責任は、国際比較プログラム(ICP)が担います。ICPは独立した統計プログラムであり、世界銀行の開発データ・グループの中にICPグローバル・オフィスが設けられています。
詳細はこちらをご覧ください: International Comparison Program (ICP)
Q5. 国際貧困ラインとは何ですか?また、国際貧困ラインを基準とした場合、世界にはどれくらいの極度の貧困層が存在しますか?
A5. 国際貧困ラインとは、貧困を定義するためのボーダーラインで、2011年の購買力平価(PPP)に基づき1日1.90ドルに設定されています。2015年には、極度の貧困層は、世界人口の10%となる7億3,600万人に減少しており、25年間で11億人以上が極度の貧困から脱出しています。
Q6. 国際貧困ラインはどのようにして決定されるのですか?
A6. まず、国別貧困ラインを確認します。その国でそれ以下の収入では、最低限の栄養、衣類、住まいのニーズが満たされなくなるというレベルが、国別貧困ラインです。当然ながら、裕福な国ほど貧困ラインは高く、貧しい国ほど低くなる傾向にあります。
ですが、世界全体の極度の貧困層の数を把握するためには、ただ単に各国の貧困層の数を足せば良いわけではありません。貧困層を定義する基準が国によってそれぞれ異なるからです。そのため、全ての国の貧困層を同じ基準で測定する貧困ラインが必要になります。
1990年、独立した研究者のグループと世界銀行は、世界の貧困層の数を把握するため、最貧国の基準を用いた測定法を提案しました。まず最貧国数カ国の国別貧困ラインを検証し、それを購買力平価(PPP)を用いて共通の通貨価値に 換算するという方法です。PPPとは、ある国である価格で買える商品やサービスが他の国ならいくらで買えるかを示す換算レートです。 共通の通貨に転換すると、これらの最貧国の内6カ国における国別貧困ラインが1人当たり1日約1ドルになることが分かり、これが最初の国際貧困ラインである1日1ドルの根拠となりました。
2005年、各国間の物価に関する比較可能なデータがより多く集められ再度検討が行われた結果、国際貧困ラインは、世界の最貧国の内15カ国の国別貧困ラインを基に改定されました。これら15の国別貧困ラインを平均すると、1人当たり1日1.25ドル(前回同様PPPベース)となり、これが改定後の新たな世界貧困ラインとなりました。
そして2015年に再び、2005年と同じ15の最貧国の国別貧困ラインを用いて(つまり測定基準を変えずに)、1.90ドル(2011年のPPPベース)という新国際貧困ラインへの改定を決定しました。
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地域ごと・所得ごとの暮らしと人口
見返し固定リンク
巻末の見返しには地域ごとの人口と所得ごとの暮らしを掲載している。地域ごとの人口は、国連人口部による2017年の世界人口予測(UN-POP[1])の出生率中位予測を基にしている。人口は10億人単位で記号にした(Gapminder[3]を参考に)。
世帯あたりの所得はひとりあたりのGDP(購買力平価ベース、2011年国際ドル)を基にした(ICP[1])。2013年の所得とジニ係数のデータは、PovCalのデータを基に2017年と2040年の数値を予測した。予測の手法はHellebrandt and Mauro[1]による“The Future of Worldwide Income Distribution”(2015年4月)を参考にした。2040年の数値にはIMF[1]の予測を利用した(Gapminder[8])。
所得の対数正規分布はBas van Leeuwenが“World Income Inequality 1820-2000”で用いた手法を(Zanden[1])基に算出した。よりPovCalの調査結果に沿うように一部調整している。
未来の所得ごとの人口については、こちらに詳しく書いている。
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イントロダクション
質問1: 低所得国における女子教育 (P9)
イントロダクション固定リンク
現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を修了するでしょう?
- A20%
- B40%
- C60%
正解はC。低所得国の女子の60%は初等教育を終えることができる。厳密には63.2%だが(2015年のデータ。詳しくはWorld Bank[3]を参照)、誇張を避けるため60%に切り捨てた。
ここでは意図的に「低所得国」を定義していない。第1章で書いたように、「低所得国」という言葉を人々がどのように受け取るかを調べるためだ。
初等教育の修了率、または初等教育最終学年への総進学率は以下のように計算する。まず、初等教育最終学年に新しく進学する子の数を数える(年齢は関係ない。留年生は除く)。この数を、その学年の子の典型的な年齢(およそ11歳)の人口で割ればよい。(訳註: ちなみにこれはユネスコによる定義だ。)
世界銀行(World Bank[2] )によると、2017年に「低所得国」と分類されたのは31カ国。データは米国国際開発庁(USAID-DHS[1])とユニセフ(UNICEF-MICS)による世帯調査を、ユネスコ(UNESCO[3])がまとめたもの。
この質問についてさらに詳しくはこちら。
2017年にこの質問を14カ国1万2000人に行ったところ、正解率は7%だった。
訳者による補足: P40の脚注には、以下のように書かれている:
女子が初等教育を終える割合が35%を切る国は3つしかない。しかし、これらの数字は正確と言うにはほど遠いし、最新のデータでもない。アフガニスタンの15%は1993年、南スーダンの18%は2011年、チャドの30%は2011年のものだ。ソマリア、シリア、リビアには公式の数字がない。
この6カ国では、男女は極めて不平等だ。しかし、世界中の初等教育を受ける年齢の女子のうち、この6カ国に住む女子は2%しかいない(UN-POP[4]:)。ちなみに、この6カ国では、多くの男子も学校に通えていない。
· 詳細(準備中)
質問2: 世界の大半の人の所得 (P9)
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世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?
- A低所得国
- B中所得国
- C高所得国
正解はB。世界の大半の人は中所得国に住んでいる。質問1と同じく、それぞれの所得グループの定義は意図的に省いている。「低所得国」という言葉を人々がどのように受け取るかを調べるためだ。
世界銀行は(World Bank[2])、ひとりあたりの国民総生産(現在のUSドル)をもとに国々をいくつかのグループに分けている。低所得国に暮らすのは世界の人口の9%。中所得国に暮らすのは世界の人口の76%。残りの16%は高所得国に暮らしている(World Bank[4])。分類方法は以下の通り。
- 低所得国:
- ひとり当たり国民総生産: $1,005以下
- 31カ国
- 人口: 7億人
- 中所得国:
- ひとり当たり国民総生産: $1,006〜$12,235
- 109カ国
- 人口: 56億人
- 高所得国:
- ひとり当たり国民総生産: $12,236以上
- 78カ国
- 人口: 12億人
· 詳細(準備中)
質問3: 極度の貧困 (P9)
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世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?
- A約2倍になった
- Bあまり変わっていない
- C半分になった
正解はC。1日1.9ドル以下で暮らす人の割合は1993年の34%から2013年の10.7%へと減った(World Bank[5])。「1.9ドル以下」と小数点が入った数字を聞くと、精度が高い調査なのかと思いがちだが、実際には不確定要素がとても多い。そもそも、極度の貧困を測るのはとても難しい。最も貧しい人々の多くは、自給農家か貧しいスラムの住民だ。暮らしはしょっちゅう変わるし、お金の出入りも記録されにくい。
しかし、極度の貧困率の「絶対値」は当てにならなくても、「変化」は確実に正しいと言える。調査の誤差は昔もいまも変わらない可能性が高いからだ。極度の貧困率は少なめに見積もって3分の1、多めに見積もって半分に減ったと言える。
訳者による補足: 極度の貧困についての世界銀行による日本語の説明はこちら。
· 詳細(準備中)
質問4: 平均寿命 (P10)
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世界の平均寿命は現在およそ何歳でしょう?
- A50歳
- B60歳
- C70歳
正解はC。保健指標評価研究所によれば、2016年に生まれた人の世界の平均寿命は72.48歳だった(IHME[1])。国連の予測はそれより少し低く、71.9歳だった(UN-Pop[3])。誇張を避けるため70歳に切り捨てた。
「70歳」のほかに「50歳」と「60歳」を選択肢にした理由を説明しよう。わたしたちはまず、この質問を自由回答形式で聞いてみた。すると、ほとんどの人は解答欄に「50歳」または「60歳」と書き込んだ。これらをそのまま選択肢として採用したわけだ。
· 詳細(準備中)
質問5: 未来の子供人口 (P10)
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15歳未満の子供は、現在世界に約20億人います。国連の予測によると、2100年に子供の数は約何人になるでしょう?
- A40億人
- B30億人
- C20億人
正解はC。国連人口部の専門家は2年おきに「世界人口予測」を発表している。いくつかの予測のなかで、最も起こりうる確実が高いのが「出生率中位」の予測だ。これは出生率と死亡率それぞれで、最高位と最低位の中間の値をとった予測だ。
過去10年間、国連は「2100年の子供の数は現在より多くならない」という見方を貫いてきた。執筆時最新の「世界人口予測 2017年版(UN-Pop[2])」によると、2017年の子供の数(0歳から14歳)は19億7500万人。この数字は2057年に20億9400万人で頭打ちになり、2100年には19億5700万人になる。
100%正しいとは言い切れないが、この質問の選択肢のなかでは、20億人が最も現実的なシナリオであることは間違いない。
· 詳細(準備中)
質問7: 自然災害 (P11)
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自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年でどう変化したでしょう?
- A2倍以上になった
- Bあまり変わっていない
- C半分以下になった
正解はC。国際災害データベースによれば、自然災害による年間死者数は過去100年間で75%減少した(EM-DAT)。自然災害は年によってばらつきがあるので、それぞれの年ごとに過去10年間の平均を比べている。 これについて詳しく書かれている第4章では、過去25年間の平均も使っている。過去10年間に(2007年から2016年)、毎年平均8万386人が自然災害で亡くなった。1100年前(1907年から1916年)の32万5742人と比べると、25%になっている。
さらに、次の2点に注目すると、さらに大きな変化が起きていることがわかる。第一に、過去100年で人口は4倍になった。ということは、人口あたりの死亡者数を見る必要がある。1907年から1916年の間、100万人あたりの死亡者数は181人だった。一方、2007年〜2016年では11人。つまり、100年前の6%になった。
第二に、100年前は現在と比べ、災害が起きても初歩的な報道しかできなかった。つまり、昔は多くの災害が見過ごされたり、計上されていなかった可能性がある。
国際災害データベースには、1900年以降に起きた8969件の自然災害の死亡者数が記録されている。それには以下のようなカテゴリーがある:
- 動物による被害
- 干ばつ
- 地震
- 伝染病
- 熱波・寒波
- 洪水
- 霧
- 隕石
- 害虫被害
- 山崩れ
- 地滑り
- 暴風
- 火山の噴火
- 森林・原野火災
- その他の災害
· 詳細(準備中)
質問8: 人口分布 (P11)
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現在、世界には約70億人の人がいます。下の地図では、人の印がそれぞれ10億人を表しています。世界の人口分布を正しく表しているのは3つのうちどれでしょう?
正解はA。
国連によれば、2017年の人口は75億5000万人だった(UN-Pop[1])。本来なら80億人と数字を繰り上げるべきだが、70億人としているのは地域ごとの人口で四捨五入しているため。ギャップマインダー(Gapminder[1])は4つの地域の人口を国連の国ごとのデータ(UN-Pop[1])を基に次のように推定している。アメリカ大陸は10億人、ヨーロッパは8億4000万人、アフリカは13億人、アジアは44億人。
· 詳細(準備中)
質問9: 子供の予防接種 (P11)
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世界中の1歳児の中で、なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?
- A20%
- B50%
- C80%
正解はC。世界中の1歳児の88%がなんらかの病気に対して予防接種を受けている(WHO[1])。誇張を避けるため80%に切り捨てた。
世界保健機関によると、2016年の世界中の1歳児のワクチン接種率は以下の通り。
- BCGワクチン(結核): 88%
- 三種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風): 86%
- 麻疹ワクチンの初回接種: 85%
- ポリオワクチン: 85%
- B型肝炎ワクチン: 84%
- 破傷風ワクチン: 84%
- ヘモフィルスインフルエンザ菌B型ワクチン: 70%
- 麻疹ワクチンの2回目接種: 64%
- 肺炎球菌ワクチン: 42%
- ロタウイルスワクチン: 15%
結核の予防ワクチンの普及についてはWHO[10]のGlobal Health Observatory dataも参考のこと。
訳者による補足: 2017年に最も世界で接種率が高かった(88%)結核ワクチンの接種率の推移はこちら。このリンクから、BCG→Immunization coverage estimates by WHO regionを選択すれば見れる。
· 詳細(準備中)
質問10: 女性の教育 (P12)
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世界中の30歳男性は、平均10年間の学校教育を受けています。同じ年の女性は何年間学校教育を受けているでしょう?
- A9年
- B6年
- C3年
正解はA。保健指標評価研究所が188カ国を対象に行った調査によれば(IHME[2])、世界中の25歳から34歳の女性は平均9.09年の学校教育を受けている。男性は10.21年。また、2010年に146カ国を対象にした別の調査によると、25歳から29歳の女性は平均8.79年の学校教育を受け、男性は9.32年の学校教育を受けている(Barro and Lee (2013))。
これらの調査が100%正しいとは言い切れないが、どれほど誤差があっても、間違った選択肢の「6年」や「3年」にはならないだろう。平均寿命の質問と同じく、わたしたちはまずこの質問を自由回答形式で聞いてみた。そこで出た答えに近かった「6年」と「3年」を正解以外の選択肢にした。
· 詳細(準備中)
質問11: 絶滅危惧種 (P12)
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1996年には、トラとジャイアントパンダとクロサイはいずれも絶滅危惧種として指定されていました。この3つのうち、当時よりも絶滅の危機に瀕している動物はいくつでしょう?
- A2つ
- Bひとつ
- Cゼロ
正解はC。国際自然保護連合が作成したレッドリストによれば、3つの動物のうち、1996年よりさらに絶滅の危機に瀕している動物はひとつもない。
レッドリストのこちらのページには、1996年から2017年の間に、絶滅の危機に瀕している動物の数がどのように変わったかを表すチャートが載っている。
トラ (Panthera tigris): レッドリストによると、1996年にEN(絶滅危惧)と指定された。現在もそのままだ。世界自然保護基金(WWF)は、野生のトラの数は増え続けているという声明を2016年に発表した:「以前、野生のトラの数は100年にわたって減り続けていたが、最近は増え続けている。現在、野生のトラの数は最低3890頭。だが、トラはいまだに絶滅危惧種であり、さらなる保護の努力が求められる」。トラの数が増えていることは、Scientific Americanに掲載されたPlatt (2016)の記事も参考のこと。
ジャイアントパンダ: レッドリストによると、1996年にEN(絶滅危惧)と指定された。だが、以来野生の数は増え、2015年には保全状況がVU(危急)に改善した。
クロサイ: レッドリストによると、1996年にCR(絶滅寸前)とされていて、現在も変わらない。ただ、国際サイ財団によれば、野生のクロサイの数は2016年には5042〜5455頭だった。その数はゆっくりと増えており、2018年3月の段階でもまだ増え続けている。
訳者による補足: ここでは論拠にレッドリストの保全状況が使われているが、保全状況の分類は1996年を境に変わっている。 これについては、1996年のレッドリストのIntro p17を参照のこと。1996年より前のレッドリストの分類については、1990年のレッドリストのxxiiページを参考のこと。
たとえば、トラの分類は以下のように変化している:
- 2015 - Endangered (EN)
- 2011 — Endangered (EN)
- 2010 — Endangered (EN)
- 2008 — Endangered (EN)
- 2002 — Endangered (EN)
- 1996 — Endangered (EN)
- 1994 — Endangered (E)
- 1990 — Endangered (E)
- 1988 — Endangered (E)
- 1986 — Endangered (E)
このように、1996年を境に、Endangeredが"E"から"EN"に変化している。分類方法が変わると比較ができないため、現在と分類方法が同じ1996年を起点に質問を考えたのだと思われる。
ちなみに、ジャイアントパンダの分類は以下のように変化している。1988年に使われていた「Rare」という分類はもう存在しない。
- 2016 - Vulnerable (VU)
- 2008 — Endangered (EN)
- 1996 — Endangered (EN)
- 1994 — Endangered (E)
- 1990 — Endangered (E)
- 1988 — Rare (R)
- 1986 — Rare (R)
- 1965 — Unknown ( NA)
クロサイの分類は以下のように変化している。1994年以前は、絶滅(Extinct(Ex))のひとつ直前の分類はEndangered(E)しかなく、現在のようなCritically Endangered(CR)とEndangered(EN)の違いはなかったため、比較ができない。
- 2012 - Critically Endangered (CR)
- 2011 — Critically Endangered (CR)
- 2008 — Critically Endangered (CR)
- 2003 — Critically Endangered (CR)
- 2002 — Critically Endangered (CR)
- 1996 — Critically Endangered (CR)
- 1994 — Endangered (E)
- 1990 — Endangered (E)
- 1988 — Endangered (E)
- 1986 — Endangered (E)
- 1965 — Unknown (N/A)
· 詳細(準備中)
質問12: 電気 (P12)
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いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるでしょう?
- A20%
- B50%
- C80%
正解はC。GTFによれば、世界の人口の85.3%が、いくらかでも電気を使うことができる。誇張を避けるため80%に切り捨てた。「電気を使える」の基準がどれくらいかは、調査によってさまざまだ。極端な例をあげると、1週間に平均60回停電しても「電気を使える家庭」に分類されることもある。だから、質問は「いくらかでも電気を使うことができる」とした。
ちなみにGTF(The Global Tracking Framework)は世界銀行と国際エネルギー機関との合同の取り組みだ。
訳者による補足: GTFによると、サハラ以南アフリカではいくらかでも電気を使える人口の割合が低い。たとえば2016年のデータを見ると、アフリカで最も人口が多いナイジェリアでは59%しかない。しかし、現時点でアフリカ全土より人口の多い中国では100%、インドでは84%の人口がいくらかでも電気を使える。現在人口が世界4位のインドネシアにおいては97%だ。だから世界合計が80%以上となるのも頷ける。ちなみにインドでは、国土全体の電力化が最近の大きな政策目標だった。
GTFは世界銀行の世界電力供給データベース(GED)を使っている。これは、それぞれの国が行っている調査と、Socio-Economic Database for Latin America and the Caribbean (SEDLAC)やthe Europe and Central Asia Poverty Database (ECAPOV)などの他のデータをまとめたものだ。1990年から2017年の間の、高所得国を除いた144カ国における950もの調査が含まれている。ちなみに、世界銀行が高所得国としている国では電力供給が100%と仮定している。(ソース)
ちなみに、いくらかでも電気が使える人の割合は1990年時点ですでに70%だった。
· 詳細(準備中)
質問13: 気候 (P13)
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グローバルな気候な専門家は、これからの100年で、地球の平均気温はどうなると考えているでしょう?
- A暖かくなる
- B変わらない
- C寒くなる
正解はA。「気候の専門家」とは、2014年に気候変動に関する政府間パネルが公表した「第5次評価報告書(AR5)」の著者274人のことを指す(IPCC[1])。
これらの専門家は、地球温暖化について次のように述べている(IPCC[2]):
「考えられるすべての温室効果ガスの排出シナリオにおいて、21世紀に地表の温度は上昇すると思われる。熱波がより頻繁に起き、より長期化することは確実だ。豪雨はより頻繁に起き、降水量も増えるだろう。海水の温度は上がり、また酸性化する。平均海水面も上昇する」
· 詳細(準備中)
チンパンジークイズ (P14)
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ギャップマインダーのオンラインクイズは2017年に公開された(全13問・3択)。2018年版のクイズはこちら。(訳註: 質問自体は2017年版も2018年版も同じだが、それぞれの年ごとの正解率を測るため、2017年版と2018年版のページを分けているようだ。)
訳者による補足: 日本語版のチンパンジークイズはこちらから受けられる。
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調査結果 (P14-15)
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ギャップマインダーは調査会社のIpsos MORIとNovusの力を借り、14カ国に暮らす1万2000人を調査した。調査はオンライン上で行い、母集団(大人)の傾向を適切に反映するような工夫をしている(Ipsos MORI[1],Novus[1])。地球温暖化についての13問目を除いた12問の平均正解数は2.2問だった。本書では小数点を切り捨てて2問とした。
国ごとのクイズ結果は本書の付録に載っているほか、こちらでも紹介している。
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地球温暖化の認知度 (P15)
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二酸化炭素の排出が起こす地球温暖化について、世界ではじめて科学的な仮説が立てられたのは1896年のこと。 一方、科学者の間で地球温暖化についての共通理解が広まったのは1980年代だ。 そして気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が設立されたのは1988年。文中にある「たった数十年のうちに」というのは、「80年代から現在までの数十年のうちに」という意味だ。
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世界経済フォーラムでの基調講演 (P19-20)
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2015年のダボス会議にて、ハンスがクイズの結果を見せたときの瞬間は こちらの動画で見れる。それぞれの講演で行われたクイズの結果はこちら。
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10種類の本能と認知心理学 (P21)
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10種類の本能について考えるにあたって、わたしたちは数々の優秀な認知科学者の著作から影響を受けた。特に以下の本は、わたしたちの考え方を根底から覆し、世界の事実をどう伝えるべきかを教えてくれた。
- ダン・アリエリー著『予想どおりに不合理』(2013年、熊谷淳子訳、早川書房)『不合理だからすべてがうまくいく』(2010年、櫻井祐子訳、早川書房)『ずる─噓とごまかしの行動経済学』(2012年、櫻井祐子訳、早川書房)
- スティーブン・ピンカー著『心の仕組み』(2013年、椋田直子訳、筑摩書房)『思考する言語(2009年、幾島幸子・桜内篤子訳、NHK出版)』『人間の本性を考える』(2004年、山下篤子訳、NHK出版)『暴力の人類史』(2015年、幾島幸子・塩原通緒訳、青土社)
- エリオット・アロンソン、キャロル・タヴリス著『なぜあの人はあやまちを認めないのか』(2009年、戸根由紀恵訳、河出書房新社)
- ダニエル・カーネマン著『ファスト&スロー』(2014年、村井章子訳、早川書房)
- ウォルター・ミシェル著『マシュマロ・テスト』(2015年、柴田裕之訳、早川書房)
- フィリップ・E・テトロック、ダン・ガードナー著『超予測力』(2016年、土方奈美訳、早川書房)
- Jonathan Gottschall著“The Storytelling Animal”(2012年)
- ジョナサン・ハイト著『しあわせ仮説』(2011年、藤澤隆史・藤澤玲子訳、新曜社)『社会はなぜ左と右にわかれるのか』(2014年、高橋洋訳、紀伊國屋書店)
- トーマス・ギロビッチ著『人間この信じやすきもの』(1993年、守一雄・守秀子訳、新曜社)
上記の本の多くは認知バイアスについて言及している。執筆当時、英語版のWikipediaには186の認知バイアスの実験が載っている。心理学者は認知バイアスを科学的に立証するためにさまざまな努力をしている。ただ、わたしたちが本書に記した「勘違い」や「本能」はそのような実験を基にしていない。よくある間違った考え方はこのようなものだ、という仮説にすぎない。
ピンカーの『思考する言語』には、単純化本能について次のように書かれている。わたしたちは世界を理解するために、比喩といった言葉の道具を使い、たとえばモノやコトをグループ化したりする、と。
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認知バイアス (P22)
イントロダクション固定リンク
ミュラー・リヤー錯視を使って認知バイアスを説明するやり方については、 ダニエル・カーネマン著『ファスト&スロー』(2014年、村井章子訳、早川書房)から着想を得た。
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第1章: 分断本能
1995年と2017年の乳幼児死亡率 (P28)
第1章固定リンク
1995年の講義で使った乳幼児死亡率はユニセフによるもの(UNICEF[1])。本書では当初よりも新しい2017年のデータを使っている。これはUN-IGMEによるもので、ユニセフ、世界保健機関、国連、世界銀行の合同データプロジェクトだ。
1995年のハンスの講義で使った乳幼児死亡率の推定は、現在の推定とほとんど変わらない。1995年の推定はこちら:
- サウジアラビア: 1000人中292人 (1960年) → 38人 (1993年)
- マレーシア: 105人 (1960年) → 17人 (1993年)
- ブラジル: 181人 (1960年) → 63人 (1993年)
- タンザニア: 249人 (1960年) → 167人 (1993年)
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スウェーデンとサウジアラビアの進歩 (P30)
第1章固定リンク
1869年のスウェーデンの乳幼児死亡率は1000人中249人だった。77年後の1946年にはそれが35人になった。サウジアラビアでは1960年に242人だったが、33年後の1993年には35人になった。77年かかった変化が33年で起きたわけだ。乳幼児死亡率についての詳しいデータはこちら。
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1965年の世界のグラフ (P35)
第1章固定リンク
それぞれの丸は国を表しており、丸の大きさは人口を表している(使用したデータはUN-POP[1])。横軸は出生率を表しており、UN-POP[3]を基にした。グラフの右に行くほど出生率は低い。ふつうのグラフと逆だが、出生率は低いほど国が進歩しているということを表すからだ。 縦軸は1000人あたりの乳幼児生存率を表している。乳幼児死亡率のほうがよく使われるが、生存率のほうが死亡率よりも直感的だし、上に行くほど国が進歩していることを表すほうが分かりやすいから。 使用したデータはUN-IGME。
ふたつの枠は厳格な「途上国」と「先進国」の基準ではない。単にグラフをわかりやすくするためにつくった枠だ。1965年には、125カ国、世界の全人口の68%が「途上国」の枠の中に入っていた。「先進国」の枠の中に入っていたのはたったの44カ国で、全人口の30%だった。詳しくはこちらを参考のこと。
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2017年の世界のグラフ (P37)
第1章固定リンク
グラフについてはこちらの項目を参照のこと: 1965年の世界のグラフ
UN-IGMEによる乳幼児死亡率のデータは2016年まで。ここでは世界人口予測2017の出生率中位予測を利用して2017年のデータを算出した(Gapminder[6])。
2017年に「途上国」の枠の中に入っているのは、世界人口の6.4%のみ。アンゴラ、ブルキナファソ、ブルンジ、チャド、コンゴ民主共和国、東ティモール、ガンビア、マリ、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、ソマリア、ウガンダの13カ国だ。37カ国、世界人口の8.4%はふたつの枠の中にある。「先進国」の枠の中にあるのは134カ国。詳しくはこちらを参照のこと。
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初等教育修了率 (P40)
第1章固定リンク
女子が初等教育を終える割合が35%を切る国は3つしかない。しかし、これらの数字は正確と言うにはほど遠いし、最新のデータでもない。アフガニスタンの15%は1993年、南スーダンの18%は2011年、チャドの30%は2011年のものだ。ソマリア、シリア、リビアには公式の数字がない。
この6カ国では、男女は極めて不平等だ。しかし、世界中の初等教育を受ける年齢の女子のうち、この6カ国に住む女子は2%しかいない(UN-POP[4]:)。ちなみに、この6カ国では、多くの男子も学校に通えていない。
· 詳細(準備中)
低所得国、途上国の生活はどんなもの? (P41)
第1章固定リンク
ギャップマインダーは、アメリカとスウェーデンの人々を対象に調査を行い、「低所得国、途上国の生活はどんなものだと思うか?」と尋ねてみた。返ってきた答えは、決まって「30〜40年前なら正しい答え」ばかりだった。
質問: 低所得国の平均寿命は何歳?:
- 回答の平均: 45歳
- 世界銀行による推定: 62歳
質問: 低所得国で、安全な水にアクセスできる人の割合は?:
- 回答の平均: 20%
- 世界銀行による推定: 66%
質問: 低所得国で、何らかの予防接種を受けている子供の割合は?:
質問: 低所得国で、栄養失調に陥っている人の割合は?:
低所得国のデータには誤差がつきものだが、どれほど誤差があっても、人々の想像ほど悪い数字にはならない。
· 詳細(準備中)
倍増するグラフ (P45)
第1章固定リンク
本書では、人々の所得レベルや国の平均所得を比べるときは、グラフの軸に倍増する目盛を利用している。1ドルの価値は、所得レベルによって大きく異なるからだ。地震の強さを表すマグニチュード、音量を表すデシベル、酸性やアルカリ性を表すpHなど、小さい数字同士の小さな差と、大きい数字同士の大きな差が同じくらい重要なとき、倍増する目盛(対数目盛)は役に立つ。
対数目盛を使うのは恣意的ではない。対数目盛を使う方が、現実を正しくグラフで表すことができるからだ。たとえば収入がアップする場合、上がったぶんの絶対値ではなく、以前の収入に比べて何割増えたかのほうが大事だ。これを限界効用逓減の法則と呼び、グラフで表すには対数目盛が適している。ダニエル・カーネマン著『ファスト&スロー』(2014年、村井章子訳、早川書房)によると、1738年にDaniel Bernoulliがこの概念をはじめに提唱した。
また、対数目盛に関しては本書でも123ページに詳しく書いてある。
· 詳細(準備中)
4つの所得レベル (P45)
第1章固定リンク
それぞれの数字は覚えやすいように10億人単位で四捨五入している。所得は国の購買力をもとに調整されており、2011年国際ドルを基にしている。それぞれの所得レベルごとの人数の推定は以下の通り (Gapminder[8]):
- レベル1: 7億5000万人。1日の所得は2ドル以下。
- レベル2: 33億人。1日の所得は2ドルから8ドル。
- レベル3: 25億人。1日の所得は8ドルから32ドル。
- レベル4: 9億人。1日の所得は32ドル以上。
世界銀行のPovcalNetの2013年のデータと、IMF[1]の予測を基にしている。世界銀行は、極度の貧困率を算出するのにPovcalNetを使っており、世界中の家庭で所得調査を行った結果が掲載されている。
世界銀行は極度の貧困を「1日1.9ドル以下の所得」と定義しており、わたしたちの定義のレベル1と2の境目と近い。だが、1.9ドルというと実際と反して正確な調査である印象をもたらすため、わたしたちは2ドルを境にしている。
· 詳細(準備中)
レベル1における室内空気汚染 (P46)
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ユニセフによると、肺炎は子供の感染による死因でも上位に入る。5歳以下の子供、とくに2歳以下の子供に多い。2015年には、1日に2500人の子供が肺炎で亡くなった。
これらのほとんどは極度の貧困にある地域で起きた。人口の半分が極度の貧困にあるタンザニアのような国では、家庭の消費エネルギーの95%が燃料を燃やすことでまかなわれている(ソース:世界保健機関が2013年に行った室内空気汚染についての調査)。極度の貧困においては、ほぼ全ての家庭が石炭またはバイオマス(薪、家畜のふん、農作のゴミなど)を料理や暖房に使っている。
毎年400万人以上が室内空気汚染で亡くなっている。肺炎で亡くなる5歳以下の子供のうち、室内空気汚染が原因だったのは50%以上だ。(ソース: 世界保健機関。こちらとこちらを参考に。)
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レベル1の暮らしを支える子供たち (P46)
第1章固定リンク
ソマリア、エチオピア、ルワンダなど、人口の大半が極度の貧困にある国では、5歳から14歳の女子のほとんどは毎日2時間以上家事を手伝う。水を取ってきたり、薪を拾ったり、料理を担当する。水源が遠かったり、薪が手に入りにくい地域では、1日のほとんどを家事に費やすことも少なくない。詳しくはユニセフの記事を参考に: "Narrowing the Gaps---The Power of Investing in the Poorest Children." (UNICEF2)
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レベル1の暮らしをする人々 (P46)
第1章固定リンク
レベル1(1日2ドル以下)の暮らしをする人の数は世界に約7億5000人いる(Gapminder[8]) 。世界銀行による極度の貧困の定義は「1日1.9ドル以下」だが、わたしたちは「1日2ドル以下」を使っている。2ドルのほうが覚えやすいし、1.9ドルというと、極度の貧困の調査は正確だという印象を与えてしまう。
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レベル2における医療費 (P47)
第1章固定リンク
レベル1や2の暮らしでは、一寸先は闇だ。レベル1を脱した人のうち、おそらく約半数は1、2年以内にレベル1に逆戻りするだろう。Anirudh Krishna著“One Illness Away: Why People Become Poor and How They Escape Poverty”(2010)には、極度の貧困を脱しようとしている人々が病気にかかるとどうなるかが描かれている。社会保障や保険がないため、病気にかかったら一巻の終わりだ。レベル2にいる人々は世界銀行による定義の「低中所得層」とほぼ同じだが、世界銀行によると、この層は医療費の平均55%を全額現金で支払っているという。
世界銀行はVoices of the Poor (World Bank [12])という全3巻からなるインタビュー集を出しており、47カ国の貧しい人々の話が載っている。これによると、極度の貧困に逆戻りした人たちの多くは、不運な病気がその理由だったと答えている。
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レベル2における冷蔵庫と食べ物 (P47)
第1章固定リンク
レベル2に暮らしていても、冷蔵庫を持っている人は多い。しかし電力供給が不安定なため、ほとんどの人が冷蔵庫に頼りだすのはレベル3になってからだ。ドル・ストリートで人々の冷蔵庫の中を覗いてみると、所得によって食材のバリエーションが増えることがわかる。
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レベル2における繊維工場の仕事 (P47)
第1章固定リンク
カンボジアだと、2017年の衣料品業界の最低賃金は1日5ドルだった: "Cambodia raises 2017 minimum wage for textile industry workers" (ロイター)
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レベル3における交通事故 (P48)
第1章固定リンク
レベル3に暮らす勤労層が身体障害を負う原因で最も多いのは交通事故だ。参考資料はこちら: IHME[3] "Road injuries as a percentage of all disability." GBD Compare
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レベル4における出版業 (P49)
第1章固定リンク
レベル4の国では、毎年約1000人あたり1冊の新刊が発売される。Wikipedia[1]とUN-Pop[1]によれば、これはレベル3の5倍の水準だ。
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レベル4における観光 (P49)
第1章固定リンク
トリップアドバイザー社は、Ipsos MORIと共同で2015年1月16日から2月2日のあいだに観光に関するオンライン調査を行った。報告書(The TripBarometer 2015)によると、2014年にはレベル4の国の人口の半分以上(1000人中約600人)が2014年に国外に旅行した。大半は観光目的だった。これはレベル3と比べると人口あたり6倍以上の水準だ。(参考: World Bank[13]、UN-POP[1])
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「途上国」を使い続ける団体 (P50)
第1章固定リンク
国連の多くの部署は「途上国」という言葉を使い続けているが、統一された定義はない。 国連統計部は、「途上国」という言葉を「統計上都合が良いから」使い続けている(執筆時の2017年)。カタールやシンガポールという、世界で最も豊かで健康な国も含む144カ国をひとまとめにできるのは、確かに「都合が良い」のかもしれない。
世界銀行が「途上国」と「先進国」を使うのを止めると発表したとき、ダボス会議の主催団体である世界経済フォーラムはその発表をネットに再掲載した。しかし、世界経済フォーラムはいまだに言葉を使い続けている。最近(執筆時)世界経済フォーラムが掲載した記事の題名と内容は以下の通りだ。
- 難民の84%は途上国に暮らしている (2017年6月20日): 難民の数はUNHCRによるもの。「途上国」とは、時代遅れの国連統計部の定義を指す。
- グローバル貿易を途上国に役立てるための5つの方法 (2016年9月): ここでは、「途上国」は国連が「最も発展が遅れている」としている国のことを指す。ひとりあたりの所得、資産、経済の脆弱さを考慮に入れている。
- 電子化が途上国を救う(2017年7月): 途上国の定義はすぐ上の記事と同じ。
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時代遅れの「途上国」と世界銀行 (P50)
第1章固定リンク
わたしが世界銀行向けに行った講演のひとつはこちら (World Bank[14])から見れる(2015/6/8撮影)。動画の01:30:31頃から、世界はもはや分断されていないという話になる。そして講演の5ヶ月後、世界銀行はブログ記事 (World Bank[15])にて「途上国」という言葉を使うのを辞めると宣言した。記事ではわたしの最新の講演と、本書にあるようなバブルチャートと、ニューヨークタイムズによるビル・ゲイツへのインタビューが触れられていた。
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メキシコとアメリカの所得のグラフ (P52-53)
第1章固定リンク
メキシコとアメリカの所得ごとの人口分布(2016年)は、4つの所得レベルを説明したときと同じデータを基に、各国の最新の所得調査をもとにした調整を加えて算出した。
所得ごとの人口は世界銀行のPovcal[1]を基にしている。家庭あたりの所得を、購買力の違い(購買力平価)を考慮し2011年国際ドルに変換した。こうすることで国ごとの所得を正しく比較できる。横軸は対数目盛を利用している。さらに、各国の所得調査のデータ(ENIGHとUS-CPS)に沿うように分布の形に調整を加えている。
本書ではどの所得のグラフでも対数目盛を利用している。対数目盛を使用しない場合、グラフは下(2番目)のような形になる。詳しくはこちら。
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アパルトヘイト時代の南アフリカ (P54)
第1章固定リンク
現在、南アフリカの平均的な白人家族は、平均的な黒人家族の5倍のおカネを使っている。IRRによると、1970年代のアパルトヘイト時代では、白人の平均所得はは黒人の約12倍だった。US-CPSによると、2016年のアメリカでは、平均的な白人家族の所得は黒人家族の約1.6倍だった(白人: 6万5041ドル、黒人: 3万9490ドル)。 また、こちらのBBCの記事では、南アフリカにおいて人種が雇用と所得にどう影響してきたかをIRRのデータを用いて紹介している。
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ブラジルの所得格差 (P55-56)
第1章固定リンク
ブラジル全体の所得のうち、上位10%が占める割合のデータは世界銀行 (World Bank[16])から来ている。ブラジルの所得の分布のグラフはPovcalNetのデータが基となっており、 CETADを参考に微調整している。
訳者による補足: 本書の折れ線グラフは、基本的に縦軸の範囲が「ゼロから最大値」または「ゼロから100%」となっている。一方、このグラフは数少ない「縦軸の範囲が最小値から最大値」のグラフのひとつだ。
下限をゼロにすべきかは、棒グラフと折れ線グラフで話が変わってくる。棒グラフは、複数の項目の大きさを、グラフの長さという視覚的なもので比べやすくするためのグラフだから、下限はゼロでなければ恣意的だ。一方、折れ線グラフは変化を見やすくするためのグラフだから、下限がゼロである必要はないが、グラフの説明によっては恣意的にもなりうる。
このグラフの説明を見てみると、「たしかに41%は不公平なほど高い。とはいえ、41%という数字はここ数十年で最も低い数字なのだ。グラフを見れば一目瞭然だ」と書かれている。ここ数十年の変化を見やすくするため、下限を最小値にしたと考えればうなずける。もし説明が仮に「ブラジルの格差はとんでもなく減っている」だったとしたらグラフは恣意的だと言えるかもしれない。
(ちなみに、p52の折れ線グラフも下限が最小値だが、これは縦軸が違うp53のグラフと比べるため。またp108のグラフなど出生率を表しているものは、出生率が0になることはないから、棒グラフならまだしも折れ線グラフで0を下限にするのは意味がない。)
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「貧困」と「極度の貧困」 (P57)
第1章固定リンク
「極度の貧困(extreme poverty)」は専門用語で、収入が1日1.9ドル以下である状態を示す。
多くのレベル4の国では、「貧困」は相対的に定義される。「貧困ライン」は国が明確に定義したものだったり、社会保障サービスを受けられる基準だったりする。北欧諸国の公式の貧困ラインは、マラウィなど最も貧しい国の貧困ラインと比べると、購買力の大きな差を考慮したとしても20倍の差がある(World Bank[17])。
アメリカの最新の国勢調査によれば、人口の13%は収入が貧困ラインを下回っている。その貧困ラインとは1日約20ドルの収入を指す。スウェーデンだと、国が定める「貧困層」は、所得が中央値の6割以下の層のことを指す。
豊かな国の最も貧しい人たちが直面する社会的・経済的な苦難を軽んじるべきではない(World Bank[5])。しかし、それと「極度の貧困」は違う。極度の貧困にある人は、毎日のポリッジ(粥)すら買えないこともある。少しでもおカネが足りなくなったら死あるのみだ。
訳者による補足: 極度の貧困についての世界銀行による日本語の説明はこちら。
· 詳細(準備中)
貧しさの違い (P58)
第1章固定リンク
世界銀行はVoices of the Poor (World Bank [12])という全3巻からなるインタビュー集を出している。47カ国の貧しい人々に話を聞いており、これを読めば貧しさの度合いは千差万別であることが分かる。そして貧しい人たちは、貧しさの度合いに違いがあることを身をもって感じている。
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第2章: ネガティブ本能
1950年代のスウェーデンの暮らし (P62)
第2章固定リンク
ハンスはスウェーデンのウプラサにあるエリクスバーグという街で育った。そこは労働者が暮らすスラム街で、ハンスの家はエケビーというレンガ工場の近くにあった。1950年初頭のスウェーデンの下水問題は、現在のレベル2の労働者街のそれとあまり変わらない。ウプサラの衛生環境が改善したのは1970年になってからだった。当時の写真はこちらから見れる。
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海面の上昇 (P63)
第2章固定リンク
2013年に開かれたIPCC第5次評価報告書の発表会にて、ハンスは海面上昇についての講演を行った。動画はこちらから見れる: "Hans Rosling -- 200 years of global change" (IPCC[1]).
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テロの数は増加中 (P63)
第2章固定リンク
テロの犠牲者の数はGTD (2017)を参考にしている。また、所得ごとの犠牲者の数の計算についてはGapminder[3]をご覧いただきたい。
1999年は、それ以前の20年に比べて、テロで亡くなる人が最も少ない年だった。この年に世界中でテロの犠牲になった人は2200人。しかしその後の十数年間、犠牲者の数は増え続けた。2014年には、犠牲者の数は10倍以上の3万2765人になった。しかし、テロの犠牲者数は2014年から2016年にかけて減っている。
テロの恐怖についての調査はGallup[4]によるもの。
· 詳細(準備中)
漁業での乱獲 (P63)
第2章固定リンク
漁船は年々大型化し、より遠くに出て魚を獲ることができるようになった。FAO[2]の“The State of World Fisheries and Aquaculture 2016”によると、漁業の対象になる魚のうち、種が持続可能な割合は1974年には90%だったが、2013年には68.6%に減った。
ポール・コリアー著『収奪の星─天然資源と貧困削減の経済学』によると、人類の一世代が消費した魚の数と、その魚の増殖のペースを比べることで、本来どのくらいの魚を食べても良いかを知ることができる。
UNEP[1]は、世界中で500以上の魚が生息できない地帯のリストを公開している。 またIUCN Red List[4]によると、絶滅が脅かされている種の数は2015年に2万3250種だったが、2016年には2万4307種になった。
· 詳細(準備中)
「世界は良くなっている」「悪くなっている」「あまり変わっていない」の棒グラフ (P64)
第2章固定リンク
この調査はもともとYouGovが17カ国1万8000人を対象に行ったものだった。その結果にとても驚いたわたしたちは、他の調査会社でも同じ結果になるか試してみた。2017年に調査会社のIpsos-MORIが同じ質問をしてみたところ、かなり近い結果になった。本書のグラフはYouGovとIpsos-MORIの結果を合わせたもの。
比較的多くの人が「世界は良くなっている」と答えたのは中国(41%)とインドネシア(23%)だった。ただ、この2国ではインターネットを使える人口が国の全人口に比べて少ないので本書からは除外した。インターネットが使える人たちは、そうでない人たちに比べて世界の見方が違うからだ。ここでは中国とインドネシアは除外したが、「アジア人のほうが世界に対して前向きかもしれない」という仮説は検討に値する。
· 詳細(準備中)
いつデータを信頼するべきか (P64)
第2章固定リンク
第2章では、データを鵜呑みにしてはいけないという話をした。それぞれの種類のデータに対してどのような疑いを持つべきかは、ギャップマインダーが作成したガイドラインを参考にしてほしい(現在準備中)。
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19世紀の暮らし (P67)
第2章固定リンク
1800年に最も平均寿命が長かったのは、おそらくイギリスだろう。リヴィ-バッチ著『人口の世界史』(2014年、速水融・斎藤修訳、東洋経済新報社)によると、当時のイギリスの平均寿命は36歳だった。スウェーデンや他の国では平均寿命は32歳以下だった(Gapminder[4])。
イギリスの子どもたちは小さいうちから仕事をさせられた。地域ごとに違うが、みんなだいたい10歳で仕事についた。身体が小さい子どもたちは狭い炭鉱では重宝された。1842年に炭鉱での児童労働を禁止する法律が通るまで、多くの子どもたちが長時間労働で亡くなった。5歳で亡くなった子どももいた。産業革命下のイギリスでの児童労働について詳しくはこちらの記事(Griffin (2014))を参考に。
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極度の貧困率の低下: 中国、インド、中南米 (P67)
第2章固定リンク
中国、インド、中南米、そしてその他の国で極度の貧困が減ったというデータは、World Bank[5]によるもの。IMFの予測が正しいという前提のもと、わたしたちは2017年までのデータを算出した(Gapminder[9])。
· 詳細(準備中)
極度の貧困率のグラフ (P68)
第2章固定リンク
過去の極度の貧困率を正確に知ることは不可能だ。物価、通貨、食べ物、仕事、技術の変遷をすべて考慮するのは難しい。本書で用いている数字はGapminder[9]が算出したもの。1980年以前のデータは、以下のふたつの資料に基づいている。第一に、Bourguignon and Morrisson (2002)の推定によると、1820年に1日2ドル以下(購買力平価をもとに調整、1985年国際ドル)で暮らしていた人の割合は94.4%、1ドル以下の割合は83.9%だった。これを2011年の国際ドルで表すのは容易ではない。
Max RoserはOurWorldInData[1]にてBourguignon and Morrissonによる高めの推定を使っているが、わたしたちは低めの推定を使っている。理由は、ふたつめの資料であるvan Zanden[1]が、Bourguignon and Morrissonより低い推定を出しているからだ。
van Zanden[1]は、Maddison[1]による過去のひとりあたりGDPを用いて、人々の所得を算出している。所得分布を調べる際には、人々の身長の分布に注目した(これには軍の資料をあたった)。子供の頃に食べ物が足りないと、大人になっても身長が低いままだ。このように身長に注目することによって、食糧不足、すなわち極度の貧困にある人口の割合を算出した。この調査によると、1820年に1日2ドル以下(購買力平価をもとに調整、1990年国際ドル)で暮らしていた人の割合は73%、1ドル以下の割合は39%だった。
しかし、身長とGDPのデータをすべての国で見つけることはできず、人類の約25%はこの推定には含まれていなかった。軍の資料も無いのだから、含まれていなかったのはおそらく世界で最も貧しい人々だろう。この25%を極度の貧困層に加えた場合、1820年に極度の貧困で暮らしていたのは82%になる。
1800年はおそらくもっと多くの人が貧しかっただろうから、わたしたちは「1800年には全人口の85%がレベル1にいた」とした。
1980年以降のデータはPovcalNetによるもの。詳しくはこちらの項目を参考に: 質問3: 極度の貧困。世界銀行による2013年における極度の貧困率の推定は10.7%。ギャップマインダーはこの数字と、IMF[1]によるひとりあたりGDPの予測を基に2017年の極度の貧困率を推定した(Gapminder[9])。ひとりあたりのGDPが所得と連動していることと、所得分布が現在と変わらないことを前提としている。
訳者による補足: 極度の貧困についての世界銀行による日本語の説明はこちら。
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乳幼児死亡率の変化 (P69)
第2章固定リンク
1800年以前、女性ひとりあたりの子供の数は多かったものの、人口はあまり増えなかった。ということは、人類史の大半で、乳幼児死亡率(5歳までに亡くなる確率)は50%以上だったに違いない。そして無事5歳になったとしても、おそらく半分近くが大人になるまでに亡くなっていたのだろう。リヴィ-バッチ著『人口の世界史』(2014年、速水融・斎藤修訳、東洋経済新報社)によると、平均寿命が20歳のころは子供の55%が亡くなり、平均寿命が40歳のころは子供の40%が亡くなっていた。
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平均寿命とデータをどこまで疑うべきか (P69)
第2章固定リンク
平均寿命のデータは保健指標評価研究所によるもの(IHME[1])。2016年に平均寿命が50歳近くだったのはレソトと中央アフリカ共和国のみ。しかし、特にレベル1と2の国においては、データはとても不確かだ。データをどこまで疑うべきかは、こちらを参考にしてほしい。
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1800年から現在までの平均寿命のグラフ (P71)
第2章固定リンク
1876年から1878年の間、インドでは飢餓が起きた。きっかけは、1875年に起きた干ばつだった。食糧不足に陥ったインドでは病気が流行り、約500万人が亡くなった(the Great Famine)。経済史学者のマティアス・リンドグレーンによれば、インドの平均寿命はこのとき19歳にまで下がった(Gapminder[4])。
スペインかぜについては、こちらの項目を参考に。
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世界食糧計画 (P72)
第2章固定リンク
世界食糧計画(WFP)は1961年に設立され、国連を通じて食料を届ける取り組みがはじまった。 世界食糧計画が最初に役立ったのは1962年9月に起きたイランの地震のとき。この地震で1万2000人が亡くなり、人々は住むところを失い、国は一時期食糧不足に陥った。
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レソトの平均寿命とデータの不確かさ (P75)
第2章固定リンク
IHME[1]によると、2016年に平均寿命が50歳に近かったのは2カ国だけ。中央アフリカ共和国の50.2歳と、レソトの50.3歳だ。レベル1の国では人々の健康を正確に測るのは難しい。IHMEのモデルの信頼区間は±2.5歳だが、モデルが変わったり計算方法が変わると、平均寿命も大きく変わる。
IHMEの以前の推定と、その前の推定を比べてみると、全世界のうち24%の国で信頼区間よりも大きく平均寿命が変わっていた。たとえばIHMEによるGlobal Burden of Disease Studyの2013版によると、ボツワナの2013年の平均寿命は62.6歳から68.7歳の間とされていた。しかし2015年版を見ると、2013年の推定の下限は56.9歳と、5.7歳低くなっていた。これはモデルがHIV流行をより正確に測るように改善されたからだ。
これはレベル1や2の国における平均寿命の推定誤差の一例にすぎない。データがより正確なレベル3や4の国では、信頼区間が大きく変わることはない。
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スウェーデンとインドの識字率 (P75)
第2章固定リンク
100年前のスウェーデンでも、現在のインドでも、簡単な字を認識でき、文章をゆっくりと読めれば「識字」ができるということになる。つまり「識字率」は、難しい文章を読むことができる人の割合ではない。スウェーデンの過去の識字率はvan Zanden[2]とOurWorldInData[2]を参考にした。インドの識字率はIndia Census 2011を参考にした。
インドの最新の国勢調査によると、7歳以上の識字率は74%。ビハール州では64%、ケーララ州では94%と差はあるものの、10年前の国勢調査に比べて全体の識字率は10%増えている。このままいけば、2017年にはインドのほとんどの地域で識字率が80%を超えることになる。
一方スウェーデンでは、1765年頃から識字率がゆっくりと向上しはじめた。教会の関係者が家に押しかけ、教理問答を受けさせ、読み書きができずに答えられなかった人たちを罰しはじめたからだ(その様子の絵はこちら)。ただ、多くのスウェーデン人が読み書きができるようになったのはそれから1世紀後だった。1842年にスウェーデンは教育改革を行い、子ども達は強制的に学校に行かされるようになり、識字率はさらに向上した。1900年にはスウェーデンの識字率は87%になった。
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レベル1における予防接種 (P76)
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2016年のアフガニスタンでは、1歳児の60%以上が世界保健機関が推奨する予防接種を受けている。接種率は以下の通り。ソースはWHO[1]。
- BCGワクチン(結核): 74%
- 三種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風): 65%
- B型肝炎ワクチン: 65%
- ヘモフィルスインフルエンザ菌B型ワクチン: 65%
- 麻疹ワクチンの初回接種: 62%
- 破傷風ワクチン: 65%
- 肺炎球菌ワクチン: 65%
- ポリオワクチン: 60%
レベル1の多くの国と同じく、麻疹ワクチンの2回目の接種率のみ60%を下回り、39%だった。ちなみにこれは麻疹の抗体の保有率を95%から99.99%に上げるワクチンだ。
これらのワクチンは、スウェーデンがレベル1や2だった頃には開発されていなかった。これは、当時のスウェーデンの平均寿命がいまのアフガニスタンより短かった理由のひとつだ。(訳註: 2016年のアフガニスタンの平均寿命は約63歳。)
訳者による補足: アフガニスタンは、2019/2/17時点で外務省が国全体に退避勧告を出している7カ国に含まれている。その7カ国とはリビア、南スーダン、中央アフリカ共和国、ソマリア、イエメン、シリア、アフガニスタンのみ。そんな国でも、1歳児の60%以上が予防接種を受けている。
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32のグラフ: 乳幼児の死亡率 (P78)
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グラフは10年間の平均の推移を表している(Gapminder[6])。最後の数字はUN-IGMEが2017年に公開した1990年から2016年の乳幼児死亡率だ。1990年以前の数字は何百もの資料を基にしているが、主にChild Mortality EstimatesとBrian R. Mitchell著International Historical Statisticsを参考にし、最終的にグラフがひとつの線になるように調整している。
- 1800年から1950年: 過去の推定はマティアス・リンドグレーンがChild Mortality Estimatesをもとにまとめた。また、Brian R. Mitchell著International Historical Statisticsに載っている「乳児」死亡率のデータを、回帰分析を使って乳幼児死亡率に変換した。分析データはこちらのページ下部のVersion 7からダウンロードできる。
- 1950年から2016年: UN-IGMEはユニセフ、世界保健機関、国連人口部、世界銀行が共同で立ち上げた統計プロジェクトだ。2017年10月17日に、最新の世界の乳幼児死亡率データが公開された。ほぼ全ての国において1970年からの乳幼児死亡率が掲載されており、半分の国では1950年からのデータが公開されている。
- また、UN-Pop[1],世界人口予測 2017 (UN-Pop[1])にも、世界各国の乳幼児死亡率のデータが掲載されている。
1970年から2016年の間は、世界の乳幼児死亡率の推定にUN-IGMEのデータを使っている。他の期間は、上記の資料をもとに国ごとの乳幼児死亡率を算出し、国の人口を加味した平均を求めることで世界の乳幼児死亡率を算出している。
世界の乳幼児死亡率を正しく求めるには、世界中で出生数と子供の死亡数を数えないといけない。しかし、世界規模の出生数の統計が無い時期もある。その時は、出生数の代わりに「出生率×人口」を使っている。
UN-IGMEのデータがある1970年から2016年の間にも、わたしたちの推定(国ごとの乳幼児死亡率を算出し、国の人口を加味した平均をとる)を当てはめてみた。数値はかなり近かったが、わたしたちの推定のほうがやや高かった。だから、UN-IGMEのグラフとわたしたちの推定のグラフが1990年で交差するように、わたしたちの1990年以前の推定を全体的に少しだけ下げている。この調整についてはこちらに詳しく書いている。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 死刑 (P78)
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死刑を無くすべき理由は、冤罪のリスクがあるからだけではない。死刑はふたつの基本的な人権を侵害している。ひとつは生命権の侵害。もうひとつは拷問禁止の侵害だ。どちらの人権も1948年に国連が採択した世界人権宣言に記されており、193の国連加盟国すべてが守るべきだ。
アムネスティーインターナショナルは、1990年以降に死刑を完全廃止した国のリストを公開している。1990年以前のデータはWikipedia[2]とピンカー『暴力の人類史』(2015)によるもの。
訳者による補足: 本書について日本のツイッターで最も多かったコメントのひとつが、「死刑は悪いことなのか?」というものだ。上記にもあるように、国連の立場は世界人権宣言に基づき「死刑は悪いこと」であり、本書の著者は国連と同じ立場を取っている。
p49にもあるように、『ファクトフルネス』は主にレベル4の暮らしをしている人向けに書かれた本だ。p179にもあるように、現在レベル4の人口の大半は「西洋諸国」、すなわちEUとアメリカに暮らしている。
まず、EUでは死刑が廃止されている。世界人権宣言のWikipedia記事によると、『世界人権宣言を根拠とした「人権と基本的自由の保護のための条約」は欧州人権裁判所によって加盟国の憲法をも上回る法的拘束力を与えられ、EU加盟国によって議論された「欧州憲法」の中にもこの世界人権宣言が含まれている』とある。
また2019年3月現在、EU以外のヨーロッパ諸国でも、ベラルーシとロシア以外の国ではすべて死刑が廃止されている。
一方、アメリカでは2019年3月現在、50州中20州で死刑が廃止されており、全体として廃止の方向に向かっている。大きな理由のひとつはコストだ。
アメリカでは憲法に「残酷で異常な刑罰を課されることはない」という条項がある。以前は死刑に絞首刑、電気椅子が使われていたが、「残酷すぎる」とされて90年代後半に廃止の流れになった。以来、薬物が死刑に使われるようになった。しかし、薬物は即死させるのに失敗する可能性が高く、「苦しんで死ぬのなら余計残虐だ」という批判があがった。さらに、EUが死刑用の薬物輸出を廃止し、国内でも減産が続きコストが増した。
アメリカでは死刑は執行コストに加え、司法コストも高い。死刑かどうか訴訟では、死刑が考慮されない場合の訴訟と比べ1.5倍から4倍のコストがかかるとされている。より慎重に、時間をかけなければいけないからだ。
日本の内閣府世論調査(2014年)によると、死刑制度に賛成の割合は約80%。アメリカでも、1996年では約80%が死刑に賛成していた(ピュー研究所調べ)。だが、2018年には賛成の割合は54%になり、賛成と反対が拮抗している。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 有鉛ガソリン (P78)
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テトラエチル鉛は、1920年代に車のエンジンの性能を上げるためにガソリンに混入されるようになった。今振り返ってみると、これはバカげた案だった。鉛は身体のさまざまな箇所に悪影響を与える毒だし、特に子供に対しては脅威だ。詳しくは世界保健機関の鉛中毒と健康という記事(2017年更新)を参考のこと。
世界ではじめて有鉛ガソリンを禁止したのは日本だった(1986年)。その後、192カ国が同様に禁止した。現在、有鉛ガソリンが完全に廃止されていないのは、UNEP[3]によるとイラク、イエメン、アルジェリアのみ。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 合法的な奴隷制度 (P78)
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強制労働が合法である国の数を算出するにあたって、さまざまな指標を参考にした。たとえば、強制労働や農奴制を禁止する法律や憲法が無く、国連の強制労働関連条約に署名していないのであれば、強制労働が合法だといえる。
また、強制労働を禁止する法律があっても、それが形骸化している場合もある。強制労働をさせているとして訴えられた国有企業があり、ILO(国際労働機関)がそれを調査することを許可されていない場合も、国の法律がどうであれ、強制労働が合法だといえる。
法律があることと、実際に施行されていることには大きな違いがある。これはどの法律でも言えることだが、法の執行機関(警察)が機能していなければ意味がない。だから、グラフ上の数字が必ずしも強制労働の現実を的確に表しているわけではない。北朝鮮、トルクメニスタン、ウズベキスタンでは、強制労働を廃止するための努力がされていない。(訳註: 原文ではウズベキスタンのかわりにタジキスタンと書かれていたが、こちらの詳細ページではウズベキスタンのILOのリンクが貼られていることから、正しくはウズベキスタンだと思われる。)
強制労働が廃止された日付は、法律が施行された日付や憲法が改正された日付、国連が承認している195カ国が以下の国連の条約に署名した日付を利用している:
- 1926年の奴隷条約
- 1930年の強制労働条約(第29号)
- 1957年の強制労働廃止条約(第105号)
各国が強制労働を禁止する法律や憲法を定めた日付はクイーンズ大学ベルファストのJean AllainとDr. Marie LynchがまとめたSlavery in Domestic Legislationによるもの。1950年以前の過去のデータはWikipedia[1]によるもの。
2018年には世界のすべての政府の法律か憲法において、強制労働を禁止する文言が掲載されている。だが、いまだに一部の国で政府自身が強制労働を行っている。Anti-Slavery Internationalという団体は、トルクメニスタンとウズベキスタンでの国有綿産業における強制労働について言及している。特に毎年10月の収穫シーズンになると、強制労働が蔓延るとのこと。また、北朝鮮の強制労働キャンプも、頻繁に取り上げられている。ILOは、これらの国では政府と共同での実態調査が難しいとしている。よって、わたしたちはこの3カ国は強制労働が「実質的に合法」だとしている。
それ以外の「強制労働が合法な国」の数は、強制労働を法的に禁止した日付をもとに算出している。強制労働についてさらに詳しくはこちら。
訳者による補足: この脚注が書かれた後の2018年11月、ILOは「ウズベキスタンの綿花畑における強制労働・児童労働の撤廃に向けて大きな進展」という記事を公開した。
実態調査には政府は関与せず、「できるだけ高い完全無欠性を確保するために全地球測位システム(GPS)によって座標を無作為に生成し、ILOの専門家らが次の目的地に向かう直前に手渡され」たとのとのこと。ILOは「1万1000人を予告なく単独で訪問して話を聞きました。モニタリングを終え、監視員らは強制労働がほとんどなくなっているのを見出しました。2018年の木綿収穫に携わった人の93%が任意参加者であり、かつて見られた学生・生徒、教員、医師、看護師の体系的な募集・採用はありませんでした」としている。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 石油流出事故 (P78)
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タンカーから流出した石油の量だけでなく、石油流出事故の数も減っている.1970年代は1年あたり24.5件だったが、2010年から2016年の間は1年あたり1.7件に減った。データはITOPF (International Tanker Owners Pollution Federation)によるもの。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 児童労働 (P79)
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現在、ILO(国際労働機関)による児童労働の定義には、軽いパートタイム労働は含まれず、「最も劣悪な労働」だけが含まれる。児童労働の動向について全てが判明しているわけではないが、どの資料を見ても、児童労働が減ってきていることは明らかだ。
このグラフには、ILOによる3種類の報告書(ILO[7,8,9])を参考にしている。ILO[8]は2000年から2012年のデータを掲載している。ILO[8]は、ILO[7]と時期は重なるが、より幅広い年齢層(5〜17歳)をカバーしている。
一方ILO[9]は、1950年から1995年における、10〜14歳の児童労働データを掲載している。ここれによると、1950年に児童労働をさせられていた子供の割合は27.6%。しかし、当時は子供の大半が学校に行かなかったことから、27.6%はおそらく実際よりは低い数字だろう。たとえばBarro-Leeによると、当時の中国とインドでは3人に1人の子供しか学校に行けなかった。ただ、学校に行けなかった子どもたちが劣悪な労働をさせられていたとは限らないから、結局ILOの数字を使うことにした。
児童労働の割合は減り続けているが、人数で見ると、すべての期間において減り続けていたわけではない。また本書の出版後、OurWorldInData[3]が最新のデータを公開しており、数値はわたしたちの推定とかなり近い。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 核兵器 (P79)
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核弾頭の数は1980年半ばに最高数を記録したあと、ゆるやかに減っている。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)は2017年の核弾頭の数を1万4935発と推定している。
さらに詳しい内訳はThe Nuclear Notebookに掲載されている。これによると、「2017年半ばには、世界に約1万5000発の核弾頭があり、14カ国の107箇所に配置されている。うち9400発は軍事利用されているが、残りは使われておらず核廃棄される予定だ。4150発は使用可能で、1800発は司令が下され次第すぐにでも使うことができる。アメリカとロシアが圧倒的に多くの核弾頭を保有しており、全世界の核弾頭の93%を占めている。
訳者による補足: グラフでは核兵器の数は最高が「64」、最低が「15」(単位は千発)とされており、「6万4000」「1万5000」とは書かれていない。これは、核兵器の数を恣意的に小さく見せているのではない。ほかのグラフでも、グラフの最大値と最小値に共通する単位で割った数字を表示しているから、核兵器の数もそれと合わせているだけだ。たとえば農作物の収穫のグラフでも単位は千キロだし、オゾン層の破壊のグラフや石油流出事故のグラフでも単位は千トンだし、災害による死者数のグラフも単位は千人だ。ちなみに、西洋では1000ごとに単位が変わる(Thousand, Million, Billion)。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: オゾン層の破壊 (P79)
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グラフを見ると、オゾン層破壊物質の使用量が急激に減っていることがわかる。オゾン層は日焼け、白内障、皮膚がんの原因になり、植物や動物にも悪影響を与える紫外線を遮断してくれる。
科学者たちがオゾンホールの原因となるガスを突き止めたとき、世界は対応を急いだ。1987年にモントリオール議定書が採択され、すべての国がこのガスを使うことをやめた。以来、人類はオゾン層破壊物質(ODS)をほとんど使用しなくなった。2017年になるとオゾンホールが縮小し始めた(ソース: MIT)。縮小の原因は地球温暖化によるものかもしれない(ソース: NASA)。
グラフは使用量を千トンで表しているが、これは実際に重さを測った結果ではなく、他の物質に比べた悪影響を表した数字だ。データはUNEP[4]によるもの。オゾン層破壊物質に含まれるのはクロロフルオロカーボン、ハロン、四塩化炭素、メチルクロロホルム、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロブロモフルオロカーボン、ブロモクロロメタン、臭化メチルなど。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 天然痘 (P79)
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天然痘は多くの人の命を奪ってきた。たとえば、18世紀のヨーロッパでは、全死亡者の7%が天然痘で亡くなっていた(Max Roser 2018)。ワクチンは1796年にすでに開発されていたが、1980年になるまで天然痘は撲滅されなかった。撲滅できたのは、世界保健機関が世界的なワクチン活動を行ったおかげだ。最後の感染者が出たのは1977年のソマリアだった。現在、天然痘はワクチンのおかげで撲滅できた唯一の病気だ。
グラフの数字は、それぞれの国の最後の感染者がいた日付をもとに算出している。このデータは、グラスゴー大学医学・獣医学・生命科学カレッジのWellcome Trust Boyd Orr Centre for Population and EcosystemでKatie Hampsonが行った講義でも使われた。また、論文としても公開されている: Towards the endgame and beyond: complexities and challenges for the elimination of infectious diseases by Klepac, et al (2013)を参考のこと。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 大気汚染 (P79)
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訳者による補足: このグラフはひとりあたりの二酸化硫黄(二酸化炭素ではない)のグラフだ。では、総量はどうか?世界の人口は1970年に37億人から2010年に69億人、すなわち1.88倍になった。一方、ひとりあたりの二酸化硫黄排出量は38kgから14kg、すなわち2.71分の1になった。つまり総量でも減っている。
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32のグラフ: オリンピック (P80)
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訳者による補足: 原著では、ここには「民主主義: 世界の全人口のうち、民主主義国に暮らす人の割合」が掲載されていた(ソースはOurWorldInData[4])。
しかし、原著の正誤表には、「民主主義の質は過去10年で悪くなっていることから、ここには適さない。代わりにオリンピックの参加国・チーム数を掲載するべき」とあったため、日本語版ではオリンピックのグラフに差し替えた。
本書のp303には、オリンピックについて以下のように書かれている:
人間には暴力で報復したがる愚かな本能がある。なにより邪悪なのは、戦争に訴える本能だ。こうした本能に対抗できるのは、人と人との個人的な関係だ。
オリンピックも、国際貿易も、交換留学も、自由なインターネットも、人種や国家の境を越えて人と人が出会う機会だ。そんな機会がたくさんあるといい。個人の関係が、世界平和を維持するためのセーフティネットになる。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 識字率 (P80)
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1978年から2016年の識字率はユネスコ(UNESCO[2]) によるもの。識字率を定義し、正確に測るのは難しい。UNESCO[2]は、それぞれの国で微妙に違う国勢調査のデータをひとつにまとめている。
1820年から1960年のデータはvan Zanden[3]によるもの。第5章の“Education since 1820”はBas van LeeuwenとJieli van Leeuwen-Liによって書かれている。p94に識字率のグラフがあるが、このグラフには浮き沈みが何箇所かある。1970年以前の識字率のデータは正確とは言えないから、グラフの浮き沈みをそのまま記載すると誤解を招くと判断し、本書のグラフでは除いている。
訳者による補足: van Zanden[3]には1820年までのデータしかなく、「1820年の識字率は約12%だった」としている。おそらく原著の著者は、12%とすると正確なデータのように思えて誤解を招くと判断したのかもしれない。だから1820年よりさらに識字率が低かったであろう1800年を選び、識字率を12%から10%にして「1800年の識字率は約10%だった」としているのだろう。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
· 詳細(準備中)
32のグラフ: 新しい映画 (P80)
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世界中の映画好きたちが情報を更新し続けるIMDBには、ほぼ全ての映画(約350万)のデータがある。19世紀終盤に多くの映画が撮られたが、ほとんどが短かったため、「長編映画」には数えていない。ここでは70分間の映画"The Story of the Kelly Gang"が公開された1906年を最初の年にしている。詳しくはWikipedia[3]を参考のこと。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 新しい音楽 (P80)
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歴史上はじめて音楽が録音されたのは1857年のこと。(訳註: リンク先のWikipedia記事には、「2008年3月にフランス科学アカデミーが発表したところでは、この煤の上に残されていた図形を画像としてコンピュータで解析した結果として、1860年4月9日に記録された女性の唄うフランス民謡『月の光に』の再生に成功したという。フランス科学アカデミーはこれを「人類最古の録音」としている」と書かれている。)
それ以来、音楽は量と質ともに進化を遂げた。このグラフはSpotifyに登録されている曲の数を表している。Spotifyの曲データにはレコーディングの日付が入っているが、これはISRC (International Standard Recording Code)という、国際的な楽曲データベースによるもの。すべての曲がSpotifyに登録されているわけではないが、それにしてもこのグラフの形はすごい。表現活動と、文化の消費活動が最近になってどれだけ増えたかがわかる。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 自然保護 (P80)
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このグラフには国連環境計画(UNEP[5])のデータを利用しており、国際自然保護連合(IUCN[1,2])が定義した自然保護区の増減を観測している。
- 1990年以降のデータはUNEP[6]のp30から。
- 1911年から1990年のデータはAbouchakra et al (2016)によるもので、UNEP[5]の2012年のデータをまとめたもの。
- 1900年から1911年のデータはUNEP[5]のデータをもとにギャップマインダーが算出した(Gapminder[31])。
訳者による補足: 2019年2月13日にNASAが公開した記事によると、世界の緑地は20年前に比べて増えている。主な原因は中国とインドで緑化が進んだからだ。こちらの画像を見れば一目瞭然だ。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
· 詳細(準備中)
32のグラフ: 科学の発見 (P80)
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このグラフの最後の数字(約260万本)はElsevier Publishingによる推定。Elsevier Publishingは2015年に40万の査読付き論文を出している。これには世界780万人の科学者コミュニティーのうち70万人が関わった。
世界初の査読付き科学ジャーナルはthe Royal Society in LondonによるPhilosophical Transactions。第一号は1665年3月に公開され、1年間に119本の科学論文が掲載された。この数は書評などを除き、現在の科学論文と似たような形式の記事だけを数えたもの。ちなみに同じ年にフランスでJournal des Sçavansという科学雑誌が出たが、査読はなかった。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 女性参政権 (P80)
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1893年にニュージーランドが女性参政権を認めてから、他の国々も続いた。オーストラリアでは1902年に、アゼルバイジャンでは1918年に、スウェーデンでは1919年に(実際の投票は1921年)、シリアでは1949年に認められた。サウジアラビアでも2015年に女性が投票できるようになり、2017年には女性が運転できるようになった。
2017年の時点で男性でないと投票ができないのはバチカン市国のみ。バチカンでは枢機卿が国の代表を選ぶから実質ほとんどの人に投票権はないと言うこともできるが、どちらにしろ選挙において女性の意見が無視されるのはバチカンのみだ。データはWikipedia[4]によるもの。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
· 詳細(準備中)
32のグラフ: 小児がんの生存率 (P81)
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「最高水準の治療を行った場合」とある通り、これは世界の平均データではなく、アメリカで治療を行った場合のデータだ。アメリカの癌治療のデータは、ヨーロッパや日本など、他のレベル4の国の治療データと近くなる。
癌の研究は進んでおり、5年生存率も高くなってきているが、世界のほとんどの人はこういった治療を受けられないことを忘れてはいけない。データはアメリカ国立がん研究所(NCI)によるもの。前半のデータはNCI[1]を参考に。2010年の数値はNCI[2]を参考に。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 電気の利用 (P81)
第2章固定リンク
データはGTF(the Global Tracking Framework)によるもの。これは世界銀行と国際エネルギー機関との合同の取り組みだ。「電気を使える」の基準がどれくらいかは、調査によってさまざまだ。極端な例をあげると、1週間に平均60回停電しても「電気を使える家庭」に分類されることもある。だから、グラフは「いくらかでも電気を使うことができる人」とした。また、質問12: 電気も参考のこと。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 女子教育 (P81)
第2章固定リンク
グラフのデータはユネスコ(UNESCO[3])によるもの。実際に初等教育を受けている女子の数を、初等教育を受ける典型的な年齢(地域ごとに違うが、だいたい6歳〜11歳)の女子人口で割った数だ。初等教育を受ける年齢になってもそれ以前の段階の教育を受けている子達の数は、学校に通っていないとみなしている。ユネスコ(UNESCO[4])は「学校に通ってない子」の割合を出しているが、ここではその逆の「学校に通う子」の割合を出している。また、質問1: 低所得国における女子教育も参考のこと。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 予防接種 (P81)
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世界保健機関(WHO[1])は主なワクチンの接種率を公開している。ここでは、少なくとも1種類のワクチンを接種した1歳児の割合をグラフにしている (Gapminder[23])。こうすることで、近代的な薬や保険サービスにアクセスできる人々の割合がわかる。
訳者による補足: ちなみに、世界保健機関が公開している2016年の世界中の1歳児のワクチン接種率 は以下の通り。
- BCGワクチン(結核): 88%
- 三種混合ワクチン(ジフテリア、百日咳、破傷風): 86%
- 麻疹ワクチンの初回接種: 85%
- ポリオワクチン: 85%
- B型肝炎ワクチン: 84%
- 破傷風ワクチン: 84%
- ヘモフィルスインフルエンザ菌B型ワクチン: 70%
- 麻疹ワクチンの2回目接種: 64%
- 肺炎球菌ワクチン: 42%
- ロタウイルスワクチン: 15%
訳者による補足: 2017年に最も世界で接種率が高かった(88%)結核ワクチンの接種率の推移はこちら。このリンクから、BCG→Immunization coverage estimates by WHO regionを選択すれば見れる。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: インターネット (P81)
第2章固定リンク
2005年から2017年のデータはITU[2]を世界人口あたり(UN-Pop[1])で割ったもの。2005年以前は世界銀行のデータをわたしたちがまとめ直した(Gapminder[22])。
インターネットのホストサーバーの数を記録しているISC(Internet Systems Consortium)によると、はじめて記録がつけられたのは1981年8月で、213のホストサーバーがあった。おそらくその1年前の1980年には、人口あたりでみるとネットの利用者はゼロ%に近かっただろう。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 携帯電話 (P81)
第2章固定リンク
世界の携帯電話の数について語られるとき、よく国際電気通信連合(ITU)のデータが使われる。だが、ここには契約数は書かれているが、契約「者」数は書かれていない。世界には75億人いるが、SIMカードの数は72億枚もある。多くの人はたくさんのSIMカードを保有しているからだ。
GSMAは2010年以降の契約「者」数の推定を公開している。ギャップマインダーはITUとGSMAのふたつのデータをもとに、過去の契約「者」数データを推定している。まず両方のデータがある2010年の「契約者ひとりあたりの契約数」を算出し、それをもとに1980年の契約者数を算出した。ちなみにITUは1980年には世界中で2万3482の契約数があったとしている。ITUのデータは世界銀行のサイト(World Bank[18])でも公開されている。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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32のグラフ: 絶滅危惧種の保全 (P81)
第2章固定リンク
国際自然保護連合(IUCN)が作成したレッドリストには、8万7967種(動物、植物、菌類)が登録されており、絶滅のおそれの度合いが記されている(IUCN Red List[4])。このうち、2万5062(約285)が「絶滅危惧」とされている(絶滅寸前 (CR)、絶滅危惧 (EN)、危急 (VU))。
多くの種において状況は改善していないが、少なくとも絶滅の危険度が計測されるようになったというのは良いことだ。2000年以降の数字は最新のレッドリストによるもの(Red List[4])。それ以前のデータは1986年、1990年、1996年のレッドリストを参考にしている。
世界ではじめて絶滅危惧種を記録しようとした取り組みは1959年の"Threatened Mammals Card Index"だ。34の哺乳類のデータを集め、Leofric Boyleの指揮のもとThe Species Survival Commissionが記録した。
質問11: 絶滅危惧種も参考のこと。
訳者による補足: 勘違いしてはいけないポイントだが、国際自然保護連合のレッドリストには、絶滅とはまったく縁がない種も登録されている。だから、「レッドリストに載る数が増える=悪いこと」ではない。むしろ良いことでしかない。
上記の画像は「IUCNレッドリストカテゴリーと基準 3.1版 改訂2版」からの引用。この図にもあるように、絶滅とはまったく縁がない種は「低懸念」に分類される。
たとえばレッドリストには、日本で最もよく見るカラスである「ハシブトガラス」や「ハシボソガラス」も登録されている。もちろん両方とも「低懸念」だ。レッドリストにはなんと「人類」も登録されており、もちろん分類は「低懸念」だ。
32のグラフの横軸・縦軸についての訳者による補足: 32のグラフの横軸の一番左には、それぞれの題材で信頼できるデータがある最も古い年号が使われている。だから、グラフごとに横軸は違う。このため、ふたつのグラフの形を比較することはできないし、本書でもそのような比較はしていない。
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古代の墓地 (P84)
第2章固定リンク
先史人口学とは、有史以前の人々の死亡率・出生率・世代別人口などを、遺跡から採掘された人骨をもとに推定する学問だ。先史人口学者たちは、どの社会においても、死亡者の30%以上は子供だったとしている。Lewis (2006 p20)は、子供の遺骨がたくさん発見された遺跡を紹介している。子供の遺骨は博物館や大学に保管され、調査の対象となっている。
ただ、専門家は思ったほど赤ちゃんの遺骨を見つけられていない。赤ちゃんの遺骨が見つかる割合は30%よりはるかに低い。その割合は遺跡ごとに大きく違う。一部の遺跡では、何百もの大人の骨が見つかるが、赤ちゃんの遺骨はひとつも見つからなかったりする。
その理由を研究した者もいる。Manifold (2014)は、790人の子供や若者の遺骨と、それが埋まっていた地層を調査した。地層的な要因のせいで、子供の骨が分解されやすかったかどうかを解明しようとしたわけだ。
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人類史における死因 (P84)
第2章固定リンク
長い人類史の中で、人が命を落とす主な要因はあまり変わっていない。細菌、ウイルス、飢餓、暴力などだ。人々の衛生環境が近代化するまで、細菌はおそらく一定規模で人の命を奪い続けてきた。
出産の際には、合併症や感染症などで1%の母親が亡くなっていた。昔は女性ひとりあたりの子供の数が約6人だったから、約6%の女性が出産で亡くなっていたということになる。(訳註: 1 - 0.99^6 = 0.941なので、生き残るのは94%。)詳しくは、リヴィ‐バッチ『人口の世界史』、Paine and Boldsen[1]、Gapminder[25]を参照のこと。
子供が無事生まれても、その子供は30%から50%の確率で1歳になるまでに亡くなっていた。無事1歳になっても、5歳になるまでにさらに10%が亡くなっていた(Lewis[1])。ほとんどの子供は下痢か、肺炎か、麻疹か、マラリアか、細菌による感染で亡くなっていた。無事5歳になっても、大人になるまでに多くの子供が亡くなっていた。
昔は暴力や事故で亡くなる確率は常に高かった。一方、戦争、感染症、飢餓で亡くなる確率は場所と時期によって大幅に違っていた。大半の期間は、食べ物もある程度あり、そこそこ平和で、人々は比較的健康だった。しかし、だいたい50年ごとにコレラ、 天然痘、麻疹、マラリアが流行ったり、不作になったり、戦争が起きたりして、大人人口の10%以上が失われた。(Paine and Boldsen p. 176).
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殺される子供 (P84)
第2章固定リンク
暴力が日常的に起きる社会では、子供とはいえ命の保証はない。一般的に、狩猟採集社会では暴力による危険が多い(Gurven and Kaplan(2007)、ダイアモンド『昨日までの世界』(2013)、ピンカー『暴力の人類史』(2015)、OurWorldInData[5])。かといって、どの狩猟採集社会も似たようなものとは言い切れない。
暴力による死亡率が約1%だったとわかる遺跡もある。この死亡率は、現在の最も治安が悪い都市より低い。だが、そんなケースは稀だ。暴力による死亡率は、最低でも平均10%以上だったはずだ。考古学者や人類学者たちが39の狩猟採集社会における主な死因をを調べたところ、石製の矢尻が骨に埋まっていることに気づいた。それをもとに推定された殺人による死亡率は16%だった。詳しくはスティーブン・ピンカー著『暴力の人類史』(2015年、幾島幸子・塩原通緒訳、青土社)、OurWorldInData[5]を参照のこと。
また、Gurven and Kaplan(2007)は、狩猟採集社会で15歳未満が亡くなる主な要因は暴力だったと示している。
また、極度の貧困に暮らしている人々の中では、文化の違いにかかわらず、「子殺し」が行われることがある。子殺しとは、飢えで食料不足に陥ったとき、親が子を口減らしのために殺すことをいう。昔ながらの村に行き、子殺しをした親から話を聞いた人類学者たちの多くは、「子殺しで子供を失うつらさは、他の原因で子供を失うのと変わらないようだ」と報告している。詳しくはピンカー『暴力の人類史』(2015)を参照のこと。
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女子教育 (P88)
第2章固定リンク
女子教育と男子教育のデータはユネスコによるもの(UNESCO[5])。女子に教育を受ける機会を与えることが、どうして人類史上最もすばらしいアイデアのひとつだったのかは、Schultz(2002)に詳しい。質問1についての補足も併せて参照のこと。
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溺れて亡くなる (P93)
第2章固定リンク
現在の溺死についてのデータはIHME[4]、IHME[5]によるもの。1900年までは、溺死者の20%以上は10歳以下の子供だった。さまざまな予防対策や、スウェーデンライフセービング協会が水泳をすべての学校で義務教育化するよう働きかけたことが功を奏し、子供が溺死する頻度は減った。詳しくはSundin et al.(2005)を参照のこと。
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第3章: 直線本能
エボラ (P98)
第3章固定リンク
エボラのデータは世界保健機関のエボラ対策本部による報告書から引用した(WHO[3])。報告書には、流行開始から9ヶ月間の振り返りと、その後の予測が書かれている。エボラの緊急性を伝えるためにギャップマインダーがつくった配布物はこちら。ハンスがエボラについて行った講演はFactpod #6と#8から見れる。
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クリシュナ卿のチェス盤 (P98-99)
第3章固定リンク
倍々ゲームの怖さを教えてくれるインドの昔話は、「アンバラプーザ・パール・ペヤサムの伝説」と呼ばれている。由来はこの話があった寺院の名前だ。
インド全土を覆うのに必要な米の量は次のように計算した。まず、米は約300粒で6グラムになる。 次にこちらのツールを使い、1平方メートルあたりの密度を計算した。最後に、出てきた数字をインドの国土の大きさで割った。
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ノルウェーの教師向けのカンファレンス (P102)
第3章固定リンク
ノルウェーのガーデモエンで行われたカンファレンスにて、正しい答えを選んだのは81人中7人だった(9%)。ちなみに、この時はTurningPointというツールを使って集計した。
2013年にハンスがこの質問をしたとき、国連はその2ヶ月前に子供人口の最新予測を発表した。しかしその最新予測は、以前からの予測となんら変わらないものだった。国連による2010年、2012年、2015年、2017年のすべての予測で、将来の子供人口はこれ以上増えないとされていた。人口予測についてはわたしたちが公開しているこちらの記事も参考に。
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世界の人口のグラフ(紀元前8000年から現在まで) (P103)
第3章固定リンク
紀元前 8000 年から現在までの人口のグラフは、経済史学者のマ ティアス・リンドグレーンが何百もの資料をもとに作成したデータを利用している (Lindgren(2006-2016)。グラフ下部に表記しているのは主な出典のみ。
1800年〜1930年の130年間に、人口は10億人増えた。
- 1800年 → 推定9億4676万4816人
- 1812年 → 推定10億32万5622人
- 1929年 → 推定20億1704万5912人
過去の人口の推計は国連によるThe World at Six Billionという資料に詳しい。国連による西暦0年からはじまる推計はこちら。また、CaldwellとSchindlmayrによる1950年以前の推計はこちら: Historical Population Estimates: Unraveling the Consensus (2002, Population and Development Review (pp. 183--204))。
· 詳細(準備中)
過去の世界人口と3つの大都市 (P103)
第3章固定リンク
ここでは先史時代の人口と現在のリオデジャネイロ・ロンドン・バンコクの人口を比べている。現在の都市人口は国連人口部によるDemographic Yearbook (2015)のTable 8を参考にしている。これによると、現在リオデジャネイロの人口は650万人、ロンドンの人口は810万人、バンコクの人口は830万人だ。
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国連の人口予測の制度 (P103)
第3章固定リンク
人口予測は国連によるもの(UN-Pop[1,2,5])。
明日の天気を完全に予測できないように、将来の人口を完全に予測するのは難しい。ただ、国連人口部の人口学専門家は何十年もの間、人口をかなり正確に予測してきた。コンピューターによる予測が使えなかった時代でも、予測の精度は高かった。未来の子供の数の予測は、過去4回の報告書のすべてで「約20億人」とされている。正確に言うと、2017年の子供の数は19億5000万人で、2100年の子供の数は19億7000万人だ。
Bongaarts and Bulato (2000)のThe Accuracy of Past Projectionsによると、国連の過去の人口予測において、約17年後の予測の誤差は平均2.8%しかなかった。また、Also Keilman (2010)も国連の1950年から1993年の人口予測の制度を調査している。ハンスはこの調査に関する動画も公開している: How Reliable is the World Population Forecast?をご覧のこと。
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女性ひとりあたりの子供の数のグラフ(1800年から現在まで) (P108)
第3章固定リンク
本書では「合計特殊出生率」という専門用語を「女性ひとりあたりの子供の数」と表記している。
出生率は過酷な時代には一時的に下がる。1965年の少し前に出生率のグラフが上下しているのは、第二次世界大戦や飢餓のせいだ。ちなみに危機的状況を乗り越えると、出生率は以前より高くなる傾向にある。
国連(UN-Pop[3])によると、1950年の世界の出生率は女性ひとりあたり5.05人だった。2017年は2.48。現在の世界の人口置換水準は2.3だ。
1950年以前のグラフは、マティアス・リンドグレーンがさまざまな歴史的資料を基に算出したデータを使っており(Gapminder[7])、これは国連の推定ともほぼ同じだ。2017年から先の点線は国連の出生率中位予測。2099年には女性ひとりあたりの子供の数は1.96になると予測されている。
1965年の中国の大飢饉は、Wikipediaによると世界で最も多くの死者を出した飢饉だった。最も信頼のおける死亡者数の推定は4000万人だと言われている(necrometrics)。中国の人口ピラミッドを見ると、大飢饉の間は子供の数が少なかったことがわかる。
女性ひとりあたりの子供の数についてさらに詳しくはこちらのページを参考のこと。
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人口転換 (P109)
第3章固定リンク
大家族から小家族への移り変わりや、長期的な出生率の低下は人口学で「人口転換(または出生力転換)」と呼ばれる。
国連人口部のベテラン人口学者は、人口転換についてハンスにこう語った:
「人口抑制の鍵を握るのは出生率です。そして出生率が下がる前に、乳幼児死亡率も下がります。乳幼児死亡率が高いと、子供の数も抑制されにくい。だから、5人に1人の子供が亡くなる国では人口がすごい勢いで増える。
ただ、乳幼児死亡率が下がっても、自動的に出生率が下がることはありません。十分条件というよりは必要条件です。乳幼児死亡率の低下に加えて、基本的な教育、極度の貧困からの脱出、女性の権利に対する価値観の変化、避妊具へのアクセスなど、他の大事な要素がすべて揃うことによって、はじめて出生率が下がるのです」
人口学では、出生率を下げる原因を「出生力決定要因 (Fertility Determinants)」と呼ぶ。先述したように、乳幼児死亡率の低下は出生力決定要因のひとつでしかない。“Explaining Fertility Transitions”(1997)で、著者のKaren Oppen-heim Masonは出生力決定要因についてさまざまな角度から取り上げている。なぜ出生率が下がるかには諸説あり、それぞれの説は互いに矛盾している。この点について彼女は以下のように指摘している:
- 出生率が下がる原因はどこも同じだと考えられているが、実際はそうではない。
- 死亡率の低下が出生率に与える影響を無視してはいけない。
- 出生率が下がる前にも、家族計画は行われている。
- 十年単位で因果関係を調べるのは難しい。
とくに一番目は重要なポイントだ。現実的には、子供を産むのをためらう理由はひとつだけではない。Oppen-heim Masonによると、以下の4大要素の組み合わせを考えなければいけない:
- 死亡率の低下
- 価値観の変化
- 近代的な避妊具や中絶へのアクセス
- 多くの子供を持つことのデメリットがメリットより大きくなること
また、彼女によるとこれらの要素は必要条件であって十分条件ではない。先述したように、大家族が当たり前で死亡率が高いところでも、家族計画は行われている。だから、家族計画の価値観が変わらないといけない。そのためには普通の家族の姿、性役割、性行為、教育、経済に対する価値観の変化が必要だ。
ここでは文化の違いはさほど大きな影響はない。近代化して人々が豊かになるにつれて、どの社会でも性役割はすごい勢いで変わっていくからだ。ただ、大家族制度があるところや、女性に対する価値観が特に古いところでは少し時間がかかるかもしれない。
一方John Bryantは、人口転換が起こる理由について以下のように述べている:
- 社会的、経済的な暮らしの変化が、子供をつくる意味を変えるから。
- 女性が避妊具を容易に手に入れられるようになるから。
- さまざまな新しい価値観が広まるから。
Bryantによると、出生率が下がり始めるのに時間がかかった国でも、その後一気に出生率が下がる可能性がある。また、出生率が下がるのに必要な社会的要素も年々減っている。
また、人口転換には例外もある。Caldwellの"Three fertility Compromises and Two transitions" (2008 p427-446)によると、いくつかの国は死亡率が下がるずっと前から出生率が下がっていた。ハンスはCaldwellの言葉を引用し、「昔のヨーロッパでは、結婚を遅らせたり、不倫などの姦淫を糾弾することにより出生率が下がった」と発言している。
また、レベル4の国だと、所得が高いほど子供の数も多くなる。ネイチャー誌に載ったこちらの記事を参考のこと:"Advances in development reverse fertility declines," from Myrskylä M, et al. (2008).
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世代ごとの人口の増加 (P110)
第3章固定リンク
ここで紹介している、直感に反する現象は人口学で言う「人口モメンタム(慣性)」だ。出生率が低下してから、人口が止まるまでは一定の時間がかかる。本書では「人口モメンタム」を分かりやすく解説するため、世代ごとの人口だけを比べるようにしている。
未来の人口は出生率、死亡率、そして慣性によって決まる。人口を予測するために、人口学者はさまざまなシナリオを考える。たとえば出生率が人口置換水準だったり、死亡率が一定だと仮定し、他の要素を変えることで、どのような差が出るかを見たりする。
文字と図による説明だけでは、これから人口がどう変化するかはわかりづらいかもしれない。アニメーションを使ったり、模型を使って説明するほうがわかりやすいと思うので、こちらをご覧になってほしい。専門的な説明はUN-Pop[6]、UN-Pop[7]を参考に。
· 詳細(準備中)
自然との調和(過去) (P112)
第3章固定リンク
本書では、自然との調和が取れていた過去を、「女性ひとりあたりの子供の数は6人で、うち4人が大人になるまでに亡くなった」と書いている。これは当時における理論上の平均的な家族を表している。もちろん、何千年もの間、死亡率や出生率は大きく上下していた。しかし、1800年までは人口がほとんど増えなかったことから、平均的に見れば一家庭あたりふたりしか大人になれなかったはずだ。
1800年より前の出生率を知る者はいない。全ての女性が健康で、性行為を頻繁に行い、家族計画を一切行わなければ、ひとりあたりの女性の数は10人から15人になる。理論上はそうだが、現実的にこんなに多くなることはない。過去の平均はおそらく6人あたりだろう。もちろん、全員がそうだったわけではなく、Gurven and Kaplan (2007, p347)が言うように「4人以下だった社会もあり、8人以上だった社会もあった」だろう。
過去の年齢別の死亡率を知る者もいない。ただ、人口があまり増えなかったことから、人類史がはじまったころの数千年間、死亡率はとても高かったのだろう。詳しくはリヴィ-バッチ著『人口の世界史』(2014年、速水融・斎藤修訳、東洋経済新報社)を参照のこと。
命を落とす理由も様々だった。飢餓・戦争・病気は多くの人の命を奪った。農耕が盛んになったり、人口が密集したり、他の民族と交わるようになると、病原菌による感染症の数も増えた。極端に多くの人が亡くなった時期以外の乳幼児死亡率の推定は32%から45%とさまざまだ。これは、最近の狩猟採集社会の乳幼児死亡率とあまり変わらない。Gurven and Kaplan (2007)は、大昔の死亡率に対して以下のように記している:
もちろん、時期によって死亡率や殺人率は違った。ただ、人類全体で見ると死亡率の差はあまり変わらない。さまざまな環境に暮らしていた人々の死亡率がほとんど変わらなかったというのは特筆すべきだ。
また過去の人口については、Paine and Boldsen (2002)も参考にした。
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それぞれの所得レベルにおける1世帯あたりの平均人数のグラフ (P115)
第3章固定リンク
所得別の女性ひとりあたりの子供の数のグラフには、世界銀行による最新のデータを使った。これによると、2013年には世界人口の10.7%が極度の貧困に暮らしていた。わたしたちはこのデータと、IMFによるひとりあたりGDPの予測をもとに、2017年のデータを算出した。その結果、2017年に1日2ドル以下で暮らすのは7億5000万人と推定した(世界人口75.5億人の10%)。国連と世界銀行は極度の貧困を「1日1.9ドル以下の所得」と定義している。だが、1.9ドルというと実際と反して正確な調査である印象をもたらすため、わたしたちは2ドルを境にしている。
女性ひとりあたりの子供の数の推定はCountdown to 2030とGDL[1]、GDL[2]のデータを基にしている。このデータはUNICEF-MICS、USAID-DHS[1]、IPUMSなどが行った何百もの調査の結果だ。家庭調査のデータを使うことによって、国の平均を見た場合よりも、レベルごとの世帯人数が正確にわかる。ちなみにこれらの調査データでは、貧しい家庭の所得を計測するのに「家のひと部屋あたりの人数」「家の床が何でできているか」「移動手段は何か」などを使っている。 所得レベルについて詳しくはこちらを参照のこと(準備中)。
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子供の死亡率の低下 (P116)
第3章固定リンク
ハンスはTEDxChangeで行った講演にて、なぜ乳幼児死亡率を減らすことが倫理的にも環境保護的にも良いことなのかを語った。動画はこちらから見れる。
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公衆衛生の2つの奇跡 (P117)
第3章固定リンク
バングラデシュでは、独立戦争が起きた1971年に平均寿命が極端に落ち込んだ。1972年の女性ひとりあたりの子供の数は6.93人で、平均寿命は国連によると47歳、IHMEによると52歳だった。現在、バングフラデシュの女性ひとりあたりの子供の数は2.07人で、平均寿命は国連によると72.8歳、IHMEによると72.7歳になった。
また1972年以降、乳幼児死亡率も極端に減った。1972年は1000人中221.7人の子供が亡くなっていたが、2016年は34.2人にまで減った。言い換えると、1972年は子供が5歳になるまで生きられる確率は77.8%だったが、現在は96.6%になった。ちなみに1960年のエジプトでは、乳幼児死亡率は1000人中313人だった。
エジプトとバングラデシュの乳幼児死亡率はUN-IGMEによるもの。乳幼児死亡率について詳しくはこちらを参照のこと。
ナイル川をせき止めたアスワン・ハイ・ダムの建築は1960年にはじまり、1970年に完成し、1971年に運転が開始した。
世界保健チャートのウェブ版では、エジプトやバングラデシュや他の国の歩みをアニメーションで見ることができる。
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直線、S 字カーブ、すべり台、コブの形のグラフ (P119-124)
第3章固定リンク
これらのグラフは、まず世界保健チャートと同じようにデータをグラフ上に点で配置し、それらの点の中間地点を線で結んだものだ。ごちゃごちゃするのを避けるため、小さいグラフでは点を表示していない。
グラフの多くは国ごとの所得データを基に作成している(Gapminder[3])。趣味への支出を表した直線のグラフ、 予防接種や冷蔵庫を表したS字カーブのグラフ、女性ひとりあたりの子供の数を表したすべり台のグラフは家庭ごとのデータを基に作成している。
また、所得ごとの女性ひとりあたりの子供の数は、データがある国は5個の丸で表しており、それぞれの丸は所得で区切られた20%の人口を表している。とくにレベル1〜3の国では国内での差が大きいからだ。
また、一つひとつ国のレベルが上がるにつれて、グラフとまったく同じ方向に数字が変化することはほとんどない。しかし、すべての国の数十年間の変化を平均すると、グラフの形はだいたい当てはまる。どのグラフでも、同じ所得レベルに属する国のあいだにはとても大きな差がある。
· 詳細(準備中)
第4章: 恐怖本能
自然災害 (P138)
第4章固定リンク
国際災害データベースによると、2015年のネパール地震では9034人が亡くなり、20万人が負傷し、災害の影響は560万人にも及んだ。一方、ネパール政府は1万人の死亡者が出たと発表している。被害を過小評価しないように、本書ではネパール政府の推計を使った。
2003年のヨーロッパの熱波についてのデータはUNISDRによるもの。西ヨーロッパの死亡者数は4万6730人とされている。 その他の災害のデータはEM-DATによるもの。
現在バングラデシュで洪水対策に使われている、すばらしいデジタル監視システムはこちら。
· 詳細(準備中)
リリーフウェブ (P141)
第4章固定リンク
リリーフウェブは、国連人道問題調整事務所が提供する人道支援の情報サイトだ。FAQページによると、リリーフウェブの主な仕事は、人道支援者に向けて世界の紛争や災害の状況を発信することだ。
リリーフウェブの年間予算は約380万ドルで、国連人道問題調整事務所と、スウェーデン・日本・アメリカ・イギリス・デンマークなどから資金提供を受けている。
リリーフウェブには、本書で出てきたバングラデシュの洪水についての記事もある。こちらの記事によると、赤十字社と世界食糧計画が112.5トンのビスケットを被害を受けた3万世帯に配った、とある。
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飛行機事故 (P144)
第4章固定リンク
最近の飛行機事故の死亡者数は国際航空運送協会のデータを利用した(IATA)。旅客機の飛行距離のデータは、飛行機事故を減らす目的でつくられた国連の専門機関である、国際民間航空機関のデータを利用した(ICAO[1,2,3])。
飛行機事故の死亡者数の変化(Gapminder[16])は、以下のデータを参考にした:
- ICAO[3]
- 米航空会社の安全データ
- 旅客マイルのデータ (BTS[1,2] )
- 米航空業界の年次報告書 (ATAA)
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戦争の犠牲者数 (P146)
第4章固定リンク
第二次世界大戦の犠牲者数は6500万人。これはWhite[1,2]が算出したもので、さまざまな原因で亡くなった人を含む。シリアの死亡者数はUCDP[2]を参考にした。
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戦争や紛争による犠牲者数の推移のグラフ (P146)
第4章固定リンク
戦争の犠牲者数はCorrelates of War Project、Gleditsch、UCDP[1]、PRIOを参考にした。これらの戦争の犠牲者数は、戦いで亡くなった兵士と一般人の死を含むが、餓死者など戦いの外で亡くなった人は含まれない。 また、過去の戦争の犠牲者のデータを可視化した『Fallen』というインタラクティブ・ドキュメンタリーもおすすめしたい。ほかにも、1990年以降の犠牲者を比較できるツールはこちら。
戦争の犠牲者数を数えるのは難しい。戦場は、正確なデータを集めるのが最も大変な場所のひとつだ。上記の調査は公式発表とメディアの取材による数字を利用している。だが、これらの数字に異を唱える研究者もいる。
ObermeyerとMurrayは2008年に発表した論文で、計測方法を変えると、戦争の犠牲者数は増えていると論じた。その計測方法とは、戦争が起きた地域で調査を行い、家族のうち何人が戦争の犠牲になったかを数えるというもの(Sibling Methodと呼ばれる)。論文では、「ベトナム戦争以降、戦争の犠牲者数が減っているとは言えない」という結論が出された。
しかし、戦争のような極端な出来事の統計を取る際、母集団から適切な標本を抽出するのは難しい。たくさんの人が犠牲になった家族ばかりを調査したり、その逆ばかりが調査対象になった場合、全体の犠牲者数の推定に大きな誤差が生まれる。過去の戦争に関する新しい一次情報が出てくることは少ないため、誤差がどれだけあるかも予想がつきにくい。
Spagatらが2009年に発表した論文によると、前述した調査にはやはりバイアスがかかっており、各年代ごとに犠牲者が過剰に、または過少に計上されていたことが判明した。また、LacinaとGleditschが2012年に発表した論文によると、どんなに悪く見積もったとしても(たとえば、あえて過去の戦争の最も少ない犠牲者数の見積もりと、最近の戦争の最も多い犠牲者数の見積もりを使うなど)、戦争の犠牲者数は減っている。
訳者による補足: 原文では最後の段落にて、Spagatによる主張をLacinaとGleditschによる主張と混同していたので、訳文では修正した。また、Gleditschが2015年に書いたこちらの記事も参考になった。
· 詳細(準備中)
チェルノブイリの原発事故 (P148-149)
第4章固定リンク
2016年に、世界保健機関は"1986-2016: Chernobyl at 30 -- an update"という報告書を公開した。報告書によると、人々の恐れとは裏腹に、甲状腺癌の発生率の増加は見られなかった。一方、チェルノブイリの最も大きな被害は、人々の心理的・社会的な被害だったという。不安症を発症する確率が事故と無関係の人に比べ倍になったり、原因不明の身体の不調が起きる人が多くなったという。
核弾頭の数についてはNuclear Notebookを参考にした。
· 詳細(準備中)
福島の原発事故 (P148)
第4章固定リンク
東日本大震災のデータは警察庁(National Police Agency of Japan)とIchiseki(2013)によるもの。警察庁によれば、2017年12月時点での東日本大震災の死亡者数は1万5894人で、行方不明者数は2546人。Tanigawa et al.(2012)によると、特に病状が重かった61人の後期高齢者は避難中か避難直後に亡くなった。さらにIchisekiによると、高齢者を多く含む約1600人が避難生活中に亡くなった。
訳者による補足: 上記のIchisekiの論文はこちらの警察庁の資料を引用している:「東日本大震災における震災関連死の死者数」(2012年3月31日までに把握できた数)。この資料によると、震災関連死の死者は1632人で、「東日本大震災による負傷の悪化等により亡くなられた方で、災害弔慰金の支給等に関する法律に基づき、当該災害弔慰金の支給対象となった方」と定義されている。
放射線被ばくで亡くなった人はいない。世界保健機関は「死亡率の微増はあるかもしれないが、それは非常に少数の人々に限られるだろう」と結論づけた。
訳者による補足: 2018年9月には、原発作業員の死亡者のひとりが「被ばくによる死亡」として労災認定された。ただし、医学的な論文が発表されたわけでもなく、あくまで労災が認定されたということだ。これは厚生省の発表で、日経新聞、毎日新聞、朝日新聞、読売新聞が報じた。
Pew[1]が2012年に行った調査によると、日本人の76%が福島産の食べ物は危険だと答えた。John Shroder著"Hazards, Risks, and Disasters in Society" (2014)には、「福島」という単語自体にまつわる風評被害について書かれている。
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DDT (P149)
第4章固定リンク
1948年に、パウル・ヘルマン・ミュラーは「多数の節足動物に対するDDTの接触毒としての強力な作用の発見」が評価されてノーベル生理学・医学賞を受賞した。DDTを世界で初めて禁止したのはハンガリー(1968年)。それに続いたのはスウェーデンだった(1969年)。アメリカはその3年後にDDTを禁止した(CDC[2])。その後、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約にて、DDTを含むさまざまな農薬の利用を減らすべく、158カ国がPOPs条約を結んだ。
1970年以降、アメリカ疾病管理予防センターと経済連携協定はDDTによる人体への害を減らすためのガイドラインを制定している。Toxicological profile for DDT, DDE and DDDとthe EPA Pesticide informationを参照のこと。ちなみにアメリカ疾病管理予防センターは、DDTが直接体内に取り込まれることは有害だが、「自然界における低量のDDTが人体にどれほど影響を及ぼすかは不明」としている。
厳密に言うと、DDTについてはアメリカ疾病管理予防センター傘下のAgency for Toxic Substances and Disease Registry (ATSDR)という専門機関が調査しているが、わたしたちは出典元をアメリカ疾病管理予防センターとしている。詳しい組織図はこちら。
また現在、世界保健機関は貧しい地域でのマラリア対策のため、厳しい安全対策に基づいたDDTの利用を推奨している。"The use of DDT in malaria vector control" (WHO[6])とDDT in Indoor Residual Spraying (WHO[7])を参照のこと。
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子供にワクチンを受けさせない親 (P150)
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アメリカでは、子供がいる親の4%が、予防接種は大事ではないと考えている(Gallup[3])。またLarson et alが2016年に67カ国を対象に行った調査によると、67カ国に暮らす人のうち13%が、予防接種に懐疑的だという。国ごとのばらつきは大きかった。フランスやボスニア・ヘルツェゴビナでは35%以上が懐疑的だったが、サウジアラビアやバングラデシュでは0%だった。
1990年には、はしかが子供が命を落とす原因の7%だった。しかしワクチンのおかげで、現在は1%になった。また現在、はしかで亡くなる子供の多くはレベル1や2の国の子供だ。予防接種が最近になるまで普及しなかったからだ(IHME[7]、WHO[1])。
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環境運動 (P150)
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レイチェル・カーソンの『沈黙の春』は、通俗科学の本としては最も影響力のある一冊だった。この本は世界中で環境運動に火をつけた。おかげで、国際環境法に署名する国の数は増え続けている。このことはUNCTADの国際環境法のページ (OurWorldInData[9])で確認できる。
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テロ (P153)
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テロによる死亡者数はグローバル・テロリズム・データベースによるもの(GTD)。所得レベルごとのテロによる死亡者数はギャップマインダーが算出した(Gapminder[3])。テロに関する意識調査はギャラップ社によるもの(Gallup[4])
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飲酒による死 (P157)
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飲酒による死亡者数は、IHME[9]、NHTSA(2017)、FBI、BJS のデータを基に算出した。
交通事故のデータはNHTSA (2017)によるもの。2016年には飲酒運転によりアメリカで4018人が亡くなった。内訳は948人が歩行者や自転車に乗った人、1550人が飲酒運転側の車の搭乗者、1520人が他の車の搭乗者だった。また、4018人中1223人は子供だった。
一方、アメリカにおける殺人においては、殺人者の飲酒状況ははっきりと記録されていない。2016年の殺人による犠牲者は、FBIによると17250人。このうち何人が飲酒による殺人かを調べるために、わたしたちはアメリカ司法統計局(BJS)のAlcohol and Crime: Data From 2002 to 2008という資料をあたった。これによると、飲酒が原因の殺人は19〜37%だった。わたしたちは下限の20%を利用し、3450件の殺人が飲酒によるものと算出した。
ただ、多くの殺人事件は、犯人が飲酒をしていなくても起きていただろう。Klostermann (2006)によると、DVの約50%のケースでは加害者が飲酒しているが、加害者側が酒を絶っても、さらに50%の確率で暴力は続くという。
話を戻すと、2016年のアメリカで、アルコールが原因となった殺人と飲酒運転の合計は7468件。一方テロの犠牲者数は、9/11を含む平均を見ても、一年あたり155人だ。レベル4のヨーロッパの国におけるテロと飲酒による死のリスクは、アメリカとさほど変わらない。大事な人が酔っ払いに殺される確率は、テロリストに殺される確率より50倍以上高い。
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災害の比較: 何人亡くなれば、ニュースに取り上げられるのか? (P158)
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OurWorldInData[8]のサイトから“Not All Deaths Are Equal: How Many Deaths Make a Natural Disaster Newsworthy?”を閲覧すれば、災害による死を比べることができる。ギャップマインダーは現在、さまざまな死亡事故や環境問題を取り上げるメディアが、いかに偏った報道をしているかについて調べている。調査が終わり次第、こちらで公開する予定だ。
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第5章: 過大視本能
ナカラ地区の乳幼児死亡率 (P162)
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ここで使った出生数と人口のデータは、1970年のモザンビークの人口調査と、ナカラ病院による記録と、UN-IGME of 2017を基にしている。
病院で亡くなった子供の数はハンス自身の記録が基になっている。当時の政府による乳幼児死亡率の推定は、おそらく今と違っていただろう。ここでは、UN-IGME (2017)による1970年のデータを利用している。
世界銀行によると、モザンビークは1979年に世界で最も貧しい国だった。またWHO[8]によると、1980年の10万人あたりの医者の数はスウェーデンでは2.2人だったのに対し、モザンビークでは0.0255人だった。モザンビークが独立した際、ほとんどの医者は田舎を去ってしまったからだ。
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命を救う効果的な方法 (P166)
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コストをかけずに、最も多くの命を助けることができる施策については、ユニセフを参考にした(UNICEF[2])。またユニセフは、高度な医療施設におカネを使う前に、どのような基本的な医療の仕組みをまず整備すべきか解説している。ユニセフの資料はこちら: "Narrowing the Gaps---The Power of Investing in the Poorest Children" (2017)
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過大視 (P167-168)
第5章固定リンク
人々が過大視しやすい物事の例は、33カ国を対象に調査を行ったIpsos MORI[2,3]によるもの。(Perils of Perception(2015)) イギリスで行われたこの調査では、「全資産のうち上位1%の富裕層が占める割合はどのくらいか?」等の質問が出された。平均回答は59%だったが、正解は23%だ。また移民に関しての質問では、人々は全人口の25%が移民だと考えていたが、実際は13%だった。
ジョン・アレン・パウロス著『数で考えるアタマになる!』(2007年、野本陽代訳、草思社)には、数々のおもしろい過大視の例が紹介されている。たとえば、全人類の血液を紅海に流し込むと、海面はどれくらい上昇するか、など。
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教育を受けた母親と、子供の生存率の関係 (P168)
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Lozano, Murray et al.(2010)は1970年から2009年にかけて175カ国で調査を行い、母親が教育を受けていると、その子供の生存率が上がるという結論を出した。
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バックマイ病院 (P171)
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1972年にベトナム・ハノイで起きたバックマイ病院の爆撃についてはWilliam Stewart Logan著“Hanoi: Biography of a City”にあるこちらの一文を参考に。
訳者による補足: バックマイ病院は日本も関わりがある病院だ。詳しくはこちら: ベトナムのSARS制圧:日本の支援の果たした役割
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ベトナム戦争 (P172)
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1965年から1975年の間にベトナム戦争で亡くなった人の数はこちらを参考にした:
- American War and Military Operations Casualties: Lists and Statistics
- Necrometrics: American Phase (unstarred) - 約130万人から170万人が亡くなったとの推定
- Charles Lewis Taylor著 “The World Handbook of Political and Social Indicators” - 約152万453人のベトナム人が亡くなったとの推定
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クマと斧 (P173)
第5章固定リンク
ハンス・ハンソンという男性が、文中で紹介した事件がそれぞれまったく違った形で報道されていることを指摘し、話題になった。彼は地域の新聞に「DVを無視するなんて何事だ」と投稿し、後にDV常習犯の男性向けに習慣改善のための支援団体をつくった。彼のインタビューはこちらから英語で読める。
Shilan Camanは、スウェーデンのDVについてカロリンスカ医科大学の学術論文で以下のように記した。 (論文のリンクはこちら: Intimate Partner Homicide Rates and Characteristics)。
「Bråによると、1990年から2005年の間に、毎年17人の女性が近しい関係の男性に殺されている。この数字は、その前の期間より減っていた。またBråによると、2008年から2013年の間を見ると、殺された女性の数は毎年13人に減っていた。2000年代初頭から約2割減っていることになる」
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スペインかぜ (P174)
第5章固定リンク
アルフレッド・W・クロスビー著『史上最悪のインフルエンザ』(2009 年、西村秀一訳、みすず書房)によると、スペインかぜで亡くなったのは約5000万人。この数字は後にJohnson and Mueller(2002)とCDC[1]によって立証された。1918年の世界の人口は18億4000万人だった。スペインかぜは人類全体の2.7%の命を奪ったということになる。
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結核と豚インフルエンザ (P174)
第5章固定リンク
豚インフルエンザのデータはWHO[17]、結核のデータはWHO[10](Global Health Observatory data)とWHO[11]によるもの。多剤耐性結核菌のリスクについてはWHO[17]を参考に。
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エネルギー源 (P175-176)
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エネルギー源の比較データはSmil (2016)によるもの。Smilは、化石燃料への依存がゆっくりと減っていることを語りつつ、食料生産、イノベーション、人口、巨大なリスクへの誤解についても語っている。
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未来の消費者 (P179)
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この分野について詳しい本は、ファリード・ザカリア著『アメリカ後の世界』(2008年、楡井浩一訳、徳間書店)、トーマス・フリードマン著『フラット化する世界』(2010年、伏見威蕃訳、日本経済新聞出版社)など。
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もうすぐ、レベル4の大半が西洋人以外になる (P179)
第5章固定リンク
このページのグラフの「西洋諸国」は、典型的なヨーロッパの学生がイメージするであろう「西洋諸国」を表している。それらは西ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、オーストラリアだ。2017年の所得ごとの人口はPovCalNetを基にしており、未来のデータはIMFの予測を基にしている。
巻末の見開きにも、未来の所得ごとの人口が載っている。こちらのアニメーションチャートもぜひ参考にしてほしい。
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第6章: パターン化本能
スウェーデンにおける避妊具 (P206)
第6章固定リンク
避妊具を普及させることが、国のためにも個人のためにもなることは、"Children of the Pill: The Effect of Subsidizing Oral Contraceptives on Children's Health and Wellbeing" (2012)という論文を参考のこと。
Andreas MadestamとEmilia Simeonovaによって行われたこの調査では、スウェーデン政府による避妊具普及の施策が、1989年から1998年の間に各地でどのような影響を与えたかが調べられた。調査の結果、補助金を利用して避妊具を手に入れた女性たちの子供は、教育水準が高く、給与も高いことがわかった。(訳註: ピルなどの補助金は若い女性が対象だったため、政府の政策は子供をつくる時期を遅らせる効果があった。)
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避妊具が手に入らない人と入る人 (P206)
第6章固定リンク
このデータは国連人口基金と国連人口部のデータベースを基にしている(UNFPAとUN-Pop[9])。ちなみに国連人口基金は性と生殖に関する健康を推進する国連の団体だ。
ここでは国連のWorld Contraceptive Use 2017という、家族計画に必要なものが手に入るかについてのデータセットを用いている。対象は子供を産む年齢(15〜49歳)で配偶者がいる女性だ。ちなみに本書では避妊具が「手に入る」女性の割合を書いているが、国連は避妊具が「手に入らない」女性の割合を公開している。これは妊娠したくない、または妊娠を遅らせたいと考える女性のうち、避妊具を使っていない女性が占める割合だ。
また、国ごとの避妊具の普及率はこちらから見れる。こちらの動くチャートも参考のこと。
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ありとあらゆるものは化学物質からできている (P207)
第6章固定リンク
化学製品恐怖症の人たちは、世界を「天然物質(安全)」と「化学物質(工業製品で有害)」の2つに分けて考える。化学物質についての世界最大のデータベース(CAS)を見る限り、世界はそのようには分かれていない。
CASには1億3200万の有機物質と合成物質が登録され、それらの特性が記載されている。このデータベースによると、物質の製造者と有害性には関係がない。たとえば、コブラトキシン(CAS登録番号12584-83-7)は天然の毒で、神経システムを麻痺させて最期に呼吸を止めてしまう。詳しくはDel Brutto (2012)(Wikipedia[8])を参照のこと。
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ドル・ストリートのサルヒ一家 (P208)
第6章固定リンク
サルヒ一家についてもっと知りたい人は、こちらをご覧いただきたい。チュニジアの家の例や、そのほかの家の例がまだまだ少ないと思った方はぜひ、ギャップマインダーに投稿していただきたい。投稿方法については、こちら。
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回復体位 (P210)
第6章固定リンク
1950年代以前のころ、意識を失った兵士をどのように寝かせるべきかを示すガイドラインは無かった。だが、1950年に起きた朝鮮戦争では、“The NATO coma position”と呼ばれる回復体位が使われるようになった。この結果、意識を失った兵士の生存率が上がった。このことはHögberg and Bergström (1997)に詳しい。
回復体位がどの応急処置マニュアルにも載るようになったのは数十年後の1990年代初頭だった。詳しくはWikipedia[10]を参考のこと。
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香港のグループによる乳幼児突然死症候群(SIDS)の報告書 (P211)
第6章固定リンク
「赤ちゃんをうつぶせに寝かせてはいけない」という情報が母親の間で広まった結果、乳児の突然死は1990年代に減った。ただ、うつぶせ寝が広まる前の水準に戻っただけとも言える。この現象はアメリカ、ノルウェー、スウェーデンで起きた。
スウェーデンで乳幼児突然死症候群(SIDS)が増えた原因がうつぶせ寝だったということは、Gilbert の論文(2005)とHögbergとBergströmによる1997年の論文“Läkarråd ökade risken för plötslig spädbarnsdöd”に書かれている。
香港のグループによる調査はDavies(1985)のもの。子供をうつぶせ寝させることが突然死を招くことに言及したはじめての調査だった。こちらの記事と、N.N. Lee (1989)によるこちらの記事を参考のこと。
ノルウェーにおける乳児の突然死についてはIrgens et. al (1995)に詳しい。乳幼児突然死症候群の傾向についての国際的な報告書はこちら。
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第7章: 宿命本能
1970年〜2016年の平均寿命: 北アフリカと西ヨーロッパ (P220)
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本書では、アフリカの平均寿命は約65歳と説明している。国連の推定だと66歳。IHMEはアフリカ全体の平均寿命を公開していないが、国ごとのデータを人口に照らし合わせた結果、アフリカ全体では65.5歳となった。この手法だと大きく見積もりがちなので、切り捨てて65歳とした。ヨーロッパの平均寿命は78歳、EU諸国の平均寿命は82歳。ここではEU諸国の平均寿命を用いている。
1970年のスウェーデンの平均寿命は74.5歳だった。北アフリカと中東(アフガニスタンを含む)の平均寿命はIHMEの2016年の推定によると73.16歳、国連の推定によると71.8歳だ。昔のスウェーデンと現在の北アフリカの平均寿命を比べるにあたっては、IHM GBD 2016のデータを使った。これによると、スウェーデンの平均寿命は1970年に74.5歳、1980年に75.9歳で、1970年代の平均は75.2歳だった。一方、現在の北アフリカの平均寿命は以下の通り。どれも世界平均の72歳より上だ。
- アルジェリア: 77.4歳
- エジプト: 72.1歳
- リビア: 75.05歳
- モロッコ: 75歳
- チュニジア: 77.46歳
世界保健チャートを見ると、これらの国の現在の所得は、当時のスウェーデンより低い (グラフのリンクはこちら)。
サハラ以南のアフリカを見ると、現在の平均寿命はIHMEによると62.87歳、国連によると59.7歳だ。IHMEの数字が高くなる理由はLancetの記事を参考に。平均寿命について詳しくはGapminder[4]を参考のこと。
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80年前のスウェーデンとアメリカ (P221)
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1930年代のころ、アメリカの農業安定局 (FSA)は国中に写真家を派遣し、大恐慌後の農村の惨状を白黒写真で伝えた。一方1938年のスウェーデンでは、Ludvig "Lubbe" Nordströmが国営ラジオのDirt Swedenという企画にて、各地の悲惨さを生々しく伝えた。このことはDemker et al著"Culture, Health, and Religion at the Millennium: Sweden Unparadised" (2014)という記事に詳しく書かれている。
こうした取り組みが政治を動かし、国中で開発プロジェクトがはじまった。スウェーデンでは福祉の仕組みがつくられ、アメリカではニューディール政策が施行された。
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サハラ以南アフリカとスウェーデンの乳幼児死亡率 (P221)
第7章固定リンク
1960年〜2017年の57年間に、サハラ以南アフリカの乳幼児死亡率は劇的に減った。一方スウェーデンは、1800年から現在までのどの57年間を見ても、サハラ以南アフリカの速度には及ばない。
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進歩の速度 (P221)
第7章固定リンク
アフリカとヨーロッパの進歩の速度を比べてみると、インフラ面では、アフリカは他の国と同じ速度で発展するだろうと言える。
- 電気
- 教育
- 下水
- 上水
最貧困層への電気へのアクセスを広げることの難しさと、過去の事例についてはこちらの記事に詳しく書かれている: Electricity for All: What Universal Energy Access Will Take.
· 詳細(準備中)
極度の貧困率の推定 (P222)
第7章固定リンク
本書のp221にも書いた通り、現在、アフリカでは約5億人が極度の貧困にある。より正確な推定は4億1000万人だ(Gapminder[9]、PovalCal[1]、IMF[1])。ただ、極度の貧困の推定には不確定要素が大きいことを忘れてはいけない。詳しくはこちらの項目を参照のこと。
ポール・コリアーは、『最底辺の10億人─最も貧しい人のために本当になすべきことは何か』(2008年6月、中谷和夫訳、日経BP社)の中で、痩せ細った土地に縛られたり、紛争地帯に暮らしている、世界で最も貧しい人たちの未来を描いている。
極度の貧困がどこにあるかを知るには、まず各地域の乳幼児死亡率を見ることだ。乳幼児死亡率は極度の貧困と密接に結びついている。これに加え、紛争地帯の場所、紛争地帯に暮らす人口、痩せた土地に暮らす人口などを併せて見ることで、極度の貧困がどこにあるかが分かる。
紛争が続く限り、極度の貧困を脱するのは難しい。
訳者による補足: 極度の貧困についての世界銀行による日本語の説明はこちら。
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イランの出生率 (P224)
第7章固定リンク
文中では、「合計特殊出生率」のかわりに「女性ひとりあたりの子供の数」を使っている。
わたしをイランに招いてくれたのは、テヘラン医科大学のフセイン・マレク・アフザリ教授だった。アフザリ教授は大学付属の不妊治療クリニックを見学させてくれ、イランにおける家族計画と性教育プログラムについて教えてくれた。
ハンスが講義を行った1998年、イランの出生率はまだ低下途中だった。しかし当時ハンスが手に入れられたデータを見る限り、低下の速度はイランが世界で最も速かったとも。ただ、現在入手可能な国連のデータを見ると、同時期のオマーンのほうが低下速度が速かったとも言える。ただ、5年間の平均の低下速度を比べてみると、歴史的に最も低下速度が速かったのはアルメニア、次いでイラン、中国、オマーン、北朝鮮、ロシア、キューバの順になる。
イランの進歩は、公衆衛生と女性教育の成果だ。現在、イランの女性は教育を10年以上受けている。1970年はたった2年しか教育を受けられなかった(IHME[2])。また、平均寿命は同期間に56歳から76歳になった。昔と比べたら、イランは遥かに進歩している。
他の国と比べてみよう。現在のアフガニスタンだと、女性は平均1年しか教育を受けていない。1970年のイランの半分だ。現在、イランの出生率は1.636で、アメリカ(1.876)やスウェーデン(1.909)より低い(ソースは国連の世界人口予測 2017)。
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宗教別のグループ分け (P226)
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ほとんどの国では、人口の過半数が世界的な宗教のひとつを信仰していて、チャートを見ればどの国がどの宗教に属しているかがわかる。しかし、どの宗教が多数派かがはっきりしない国も多い。
たとえば、ピュー研究所のデータ(Pew[2,3]: Religious Composition by Country)に基づいてわたしたちが算出したところ、ニカラグアでは2010年時点で人口の49%がキリスト教徒で、48%がイスラム教徒だった。ちなみにピュー研究所は、2010年のデータと未来のデータを掲載している。
主要な宗教がはっきりしない81カ国については、それぞれの宗教を3つの丸で表し、ピュー研究所(Pew[2])とアメリカ合衆国国際開発庁による人口保健調査(USAID-DHS[2])のデータに基づいてそれぞれの出生率を推測した。また、各宗教のおよそのひとり当たり所得については、経済協力開発機構 およびほかの情報源(GDL[1],GDL[2],OECD[3])から推測した。
· 詳細(準備中)
所得が高いほど子供の数は少ない (P226)
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各宗教ごとの平均出生率はPEW[3]によるもので、全ての所得レベルにおける出生率を計算している。出生率が最も高いのはイスラム教徒(3.1)。次いでキリスト教徒(2.7)、ヒンドゥー教徒(2.4)、ユダヤ教徒(2.3)の順に高い。世界平均に近いのはヒンドゥー教徒だ。PEWの報告書はこちらからダウンロードできる。
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所得・子供の数・宗教のグラフ (P227)
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ある意味、3つの宗教だけを選んでグラフにするのは無理がある。同じ宗教を信じていたとしても、人々の信仰心は多様だ。ひとりひとりが違うように、ひとりひとりの信仰心もまったく違う。
ネットで世界の宗教の樹形図を検索してみると、どれも元々はいくつかの共通した考え方から派生したことがわかる。時が経つにつれ、解釈の違いや信仰の違いが生じ、まるで木のように枝分かれして多種多様な宗教ができる。ふたつの木の枝がひとつに戻ることがないように、枝分かれしたふたつの宗教がひとつになることは稀だ。
世界の大きな宗教を信じない人は約11億人いる。特に信仰がない人たちや、不可知論者や無神論者などだ。世界には約21億人のキリスト教徒と16億人のイスラム教徒がいる。他の大きな宗教を信じる人たちは26億人いる(ヒンドゥー教徒は10億人、仏教徒は5億人)。詳しくはPEW[2]とthe ARDA[1]を参考のこと。
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スウェーデンの価値観と性教育協会 (P227-228)
第7章固定リンク
世界で最も古いコンドームは紀元前1万年以上前のエジプトのもの。(訳註: 壁画に描かれていた)。19世紀になるとコンドームは性能が上がり、ゴムの技術が発達して安価になった。
スウェーデンではコンドームは合法だったが、医療機関でしか入手できなかった。しかも1939年までは、避妊に関する知識を広めようとすると牢獄行きだった。「家族や社会に悪影響だし、売春を広める恐れがある」という理由からだった。
しかし、先鋭的なジャーナリストのエリーゼ・オッテセン・イェンセンがそれをひっくり返した。彼女は女性に対して性教育を行い、勇敢な女性や男性、組合の指導者を巻き込んでスウェーデン性教育協会(RFSU)を立ち上げた。法律が追いついたのは1970年代になってからだった。
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アジアの価値観 (P228)
第7章固定リンク
“Explaining Fertility Transitions”(1997)で、著者のKaren Oppen-heim Masonは「普通の家族」という概念が変わってきたことについて述べている。 所得水準が上がり生活スタイルが現代的になるにつれ、男女の役割はあっという間に変わる。しかし、親類縁者とのつながりが強い文化では、価値観の変わるスピードは遅くなる。
たしかに世界を見渡せば、男女にまつわる文化の違いはある。たとえば、東アジアで行われていた纏足など、女性に対して極端に抑圧的な文化はヨーロッパには無かった。とはいえ、文化の影響を重要視しすぎてもいけない。
· 詳細(準備中)
自然保護区域 (P231)
第7章固定リンク
自然保護区のデータについては、国連環境計画の世界自然保護区データベースと国際自然保護連合の保護地域データベースを基にした。
1900年から1911年までのデータはWDPAの記録を基にしている(Gapminder[31])。WDPAはIUCN Definition 2008 (IUCN[1])とProtected Area Categories (IUCN[2])を基に自然保護区のデータをまとめている。
1911年から1990年までのトレンドについては、Abouchakraらの著したこちらの著書を参考にしている: Looking Ahead: The 50 Trends That Matter(2016)。1990年以降のデータはUNEP[6]によるProtected Planet Report 2016の図4.1(p30)を参考にした。
32のグラフ: 自然保護も参考のこと。
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スリランカの世界初の自然保護区域 (P231)
第7章固定リンク
世界で初めて自然保護区域をつくったのは、スリランカのデーワー・ナンピアティッサ王だった (IUCN[3])。 1820年にはチャールズ・ウォータートンがイギリスのウェスト・ヨークシャーで初めて自然保護区域を作った。高さ3メートル、周囲5キロメートルもある壁を私有地のまわりにつくり、鳥や野生動物や植物を守った。
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時代遅れになったチンパンジークイズ (P232)
第7章固定リンク
1990年代にカロリンスカ医科大学の学生たちにクイズを出したところ、ヨーロッパ諸国における人々の健康水準がアジア諸国に劣っていることを知らなかった。2006年に行ったわたしの最初のTEDトークでその結果を紹介している。それから13年後に人々の知識が向上しているかを調べようとしたが、昔使ったクイズはもう使えなかった。ヨーロッパ諸国がアジアに追いついていたからだ。そのトレンドを描いた動くチャートはこちら。
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スウェーデンの教育システム (P233)
第7章固定リンク
OECDのPISA学力テストの責任者が、スウェーデンの教育改革についてどう考えているかを知るには、こちらの英語記事を読んでほしい: The Local (2017),"Deregulation and freedom of choice have hurt Sweden's schools."
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第8章: 単純化本能
専門家による予測: 単純化本能についての関連書籍 (P242)
第8章固定リンク
何かの分野に突出した専門家でも、ギャップマインダーのクイズには他の人並みに間違える。 フィリップ・E・テトロック、ダン・ガードナーは、著作『超予測力』(2016年、土方奈美訳、早川書房)でまさにこの現象について書いている。彼らは人々に未来を予測してもらったところ、狭い領域での専門知識があると予測力が落ちるという結果が出た。しかも、専門家による予測はふつうの人どころかチンパンジーより悪い結果だった。
予測力を育むには、謙虚さ、好奇心、そして間違いから学ぼうとする姿勢が大事だ。テトロックが立ち上げた予測コンサルティング会社のGood Judgementは、Good Judgement Openという予測のトーナメントを行っており、誰でもこちらから参加できる。
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リンダウ・ノーベル賞受賞者会議 (P243)
第8章固定リンク
若い研究者たちがノーベル賞受賞者から学ぶすばらしい機会が、この年に一度の会議だ。この会議を批判するつもりは露ほどもない。ただ、出席者のワクチンに関するクイズでの正解率が低かったことから、「専門知識があるからといってあらゆることに精通しているわけではない」という点を明らかにしようと思っただけだ。リンダウ会議でのわたしの講演についてもっと知りたい方は、こちら(現在準備中)を見てほしい。
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天然資源の濫用 (P245)
第8章固定リンク
共有資源とその濫用防止に関する議論は、ポール・コリアー著『収奪の星─天然資源と貧困削減の経済学』(2012年、村井章子訳、みすず書房)に詳しい。1996年から2017年の絶滅危惧種については国際自然保護連合のレッドリスト(IUCN Red List[4])も参考にした。
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病気を一網打尽にする (P248)
第8章固定リンク
1973年から1988年まで世界保健機関の事務局長を務めたハルフダン・マーラーは、病気をひとつずつ根絶するのではなく、総合的な医療(プライマリ・ヘルス・ケア)を優先すべきだという結論を出した理由について2008年のインタビューで説明している。また、1978年にアルマ・アタで行われた第一回プライマリ・ヘルス・ケアに関する国際会議にて、「総合的な医療の充実こそ、世界中で最優先目的とすべき」という宣言が行われた。
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大手製薬会社の利益の減少 (P249)
第8章固定リンク
Health Affairsに掲載されたBerndt et al. (2015)の論文によると、大手製薬会社の利益は減り続けている。また、このまま利益が減り続ければ、製薬のイノベーションに必要な投資を続けられなくなるという。フォーブス誌は2016年にこの論文を取りあげ、「製薬会社ががっぽり儲かっていた時代は終わった」と書いている。
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キューバのグラフ (P254)
第8章固定リンク
当時、ハンスはキューバの人たちに乳幼児生存率のバブルチャートを見せていた。だが、本書では平均寿命に差し替えている。「子供だけが健康なのかもしれない」という批判を防ぐためだ。本当は、平均寿命と乳幼児生存率の両方を考慮するのが望ましい。
また紙面の都合上、最も金持ちの国々と、最も不健康な国々は省いている。
現在、コスタリカとパナマはキューバと同じ所得だが、平均寿命は高い。ただ、ハンスがキューバにいたころはそうではなかった。
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アメリカの医療費のグラフ (P256)
第8章固定リンク
他のレベル4の資本主義国(EU諸国、日本、韓国など)に比べ、アメリカは医療費に対する支出が遥かに多い。医療費のデータは世界保健機関のGlobal Health Expenditure Database (World Bank[24])を参考にした。アメリカの医療費と、そのほかのレベル4にいる資本主義国の医療費の比較は、経済協力開発機構による報告書“Why Is Health Spending in the United States So High?”を参考にした(OECD[1])
他のOECD諸国に比べ、アメリカはほとんどの医療分野における支出が多い。病院、外来受診、薬剤、公衆衛生など、どの分野でもそうだ。医者・医療専門家・歯医者に対する支出と、公衆衛生に対する支出がOECD諸国に比べて遥かに多い(公衆衛生に対してはOECD平均の1.6倍)。
報告書は、アメリカは医療におカネを使いすぎなのか?という質問をしている。これは一部の基本的な医療においては完全に正しい。アメリカとフランスの基本的な診療費用を比べると、アメリカのほうが50%ほど高い。必要のない診療や高い機械、検査のしすぎなどが理由だ。わたしたちに言わせれば、医者に頻繁にかかったり、緊急を要しない医療介入は、平均寿命を伸ばすことにつながらない。むしろ逆のことが起きる。他の国では、医者は本当に治療が必要な患者に時間を割き、それは公的保険で支払われる。アメリカでは、最も治療が必要な患者に医師が時間を割くインセンティブがない。
ただ、アメリカでも一部では良い結果が出ている。患者の満足度は高く、32のグラフに載っていたように、治療さえ受けられれば癌の予後はとても良い。
ちなみに、小国のマーシャル諸島とモルディブは比較から省いている。両方ともひとりあたりの医療費がアメリカ並だが、人口が少なすぎて比較対象として妥当ではない。
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経済成長と民主主義 (P258)
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この議論のもとになる経済成長のデータは国際通貨基金のWorld Economic Outlook 2017と (IMF[1])とエコノミスト誌(The Economist[2])によるthe Democracy Index 2016から算出した。このthe Democracy Indexでは、各国の「民主主義の度合い」に1から10までの点数をつけている。最低は北朝鮮の1.8で、最高はノルウェーの9.93。過去5年間に最も急速な経済成長を果たした10カ国と、その「民主主義の度合い」の点数は次の通り:トルクメニスタン 1.83、エチオピア 3.6、中国 3.14、モンゴル 6.62、アイルラン ド9.15、ウズベキスタン 1.95、ミャンマー 4.2、ラオス 2.37、パナマ 7.13、ジョージア 5.93。この10カ国のうち、民主主義の度合いが高かった国はひとつだけだった。
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民主主義でさえ、それだけではすべてを解決できない (P258)
第8章固定リンク
レベル1の国では、民主主義によって、国は安全になるどころか不安定になることは、ポール・コリアーの著作『民主主義がアフリカ経済を殺す─最底辺の10億人の国で起きている事実』(2010年、甘粕智子訳、日経BP社)に詳しく描かれている。これは事実に基づいており、同時に恐しいものでもある。
国際団体は、レベル1の国が民主化することを望んでいる。これ自体に悪気はない。しかし民主化をしようとしても、現実的には「選挙もどき」が開かれるだけで、勝者は軍を掌握している者と相場が決まっている。もちろん他のシナリオも起こりうるが、多くの場合は物騒な結果になる。愛する人を亡くした人、飢餓で苦しむ人、学校に行けない人、紛争地帯から抜け出せない人にとって、民主主義の崇高さを説いても説得力はない。そもそも民主主義が紛争を起こしたのであればなおさらだ。
コリアーによると、ひとりあたりGDPが2700ドルを超えると、民主主義は国に安定をもたらす。しかしそれ以下だと紛争に繋がりやすい。これはちょうどレベル1とレベル2の中間だ。
民主主義の問題点についてはさらに、Fareed Zakariaが著作“The Future of Freedom: Illiberal Democracy at Home and Abroad”でも指摘している。Zakariaは、犯罪者への罰則を厳しくする法律を、人々がデメリットを考えずに支援したことについて触れている。
わたしたちはウィンストン・チャーチルの次の言葉を肝に銘じておくべきだろう。「民主主義がまるで完璧か、万能であるかのように偽ることはできない。実際、民主主義は最悪の政治形態だ。ただし、これまでに試されたほかの政治形態で民主主義よりましなものがなかっただけだ」。
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第9章: 犯人捜し本能
製薬会社が見向きもしない病気 (P262)
第9章固定リンク
患者がレベル1に集中していて、製薬会社にとって利益にならない病気のリストは、世界保健機構のデータベース(WHO[15])で見ることができる。エボラは最近までこのリストに載っていた。また、医療ジャーナルのGlob Health Actionに掲載されたVon Philipsborn (2015)の記事には、研究開発の軽視と貧困についてより詳しく書かれている。
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ユニセフの低コスト (P266)
第9章固定リンク
ユニセフの物流とサプライチェーンは見事にスリム化されている。入札を望む場合は、ユニセフが現時点で探している物資とサービスをこのサイトで見ることができる。ユニセフの調達プロセスについて詳しくはこちら。
文中で紹介したリボファームという家族経営の会社のウェブサイトはこちら。
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チンパンジークイズの結果 (P269)
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それぞれのイベントの結果はGapminder[27]を参照のこと。ジャーナリストもドキュメンタリー作家もわざと嘘をついているわけではなく、歪んだ世界の見方をしているだけだ。(p282を参照)
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難民が飛行機を使わない理由 (P271-272)
第9章固定リンク
難民が飛行機を使わない理由について、ハンスはFactpod #16: "Why Boat Refugees Don't Fly!"で語っている。リンクはこちら: Gapminder[41].
ジュネーブ条約には「迫害を逃れるため、難民申請をする権利を認める」とあるが、現実的にEUの国民にはこれは当てはまらない。またEU(2001) COUNCIL DIRECTIVE 2001/51/ECによると、EU加盟国は航空会社やフェリー会社に対し、「それらの会社がEU圏内に運び込んだが、入国を阻まれた人々」をすぐさま母国に送り返す費用を負担させるべき、とある。
第二次世界大戦中、スウェーデンはデンマークからの難民を運ぶボートを没収しなかった。このことは、BBCのドキュメンタリー映画“How the Danish Jews Escaped the Holocaust.(「デンマーク系ユダヤ人はどのようにホロコーストを間逃れたか」)”に詳しい。Goldberger(1987)によると、7220人のデンマーク系ユダヤ人がボートで逃避し命を救われた。
今日、EU指令によって不法移民をほう助する人はすべて「違法密輸業者」とされ(EU Council[1] Directive 2002/90/EC)、欧州理事会の決定によって「不法移民の輸送手段を没収する」ことが加盟国に許されている(EU Council[2] framework decision)。ジュネーブ条約によって難民の多くは亡命申請の権利を認められているが、実態はそうでない。詳しくはこちら(UNHCR)を見てほしい。
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所得ごとの二酸化炭素の排出量 (P274)
第9章固定リンク
人口の変化に合わせて各国の二酸化炭素排出量の割り当てをどう調整したらいいかについて、研究者たちは答えを出そうと努力している。参考論文はこちら: Shengmin et al. (2011)、Raupach et al. (2014)
レベル4の国々では、全二酸化炭素排出量の3分の1は交通手段からきている(アメリカだと27%)。 また、アメリカ合衆国環境保護庁によると、二酸化炭素排出量は所得とともに倍増する。ちなみに、全世界・地域ごと・国ごとの排出量データはこちらから見れる。
さらに詳しくはこちらをご覧になってほしい。
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梅毒 (P275)
第9章固定リンク
もしあなたが、いまがいい時代だと思えないようなら、梅毒の画像を探して見ればきっといまの時代に生きられて幸運だと思うはずだ。梅毒のさまざまな呼び名はグラスゴー大学図書館にあるQuétel(1990)の論文から引用した。
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毛沢東と10億の人々 (P276)
第9章固定リンク
「10億人」とは、毛沢東によって人生が変わった人のおおよその人数だ。毛沢東 が中国を支配したのは1949年から1976年。彼の政策により亡くなった人の数を正確に知るのは難しい。Necrometricsというサイトには、いくつかの死亡者数の予測と、それらがどのように算出されたかが載っている。
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出生率の低下と独裁的な政治指導者 (P276)
第9章固定リンク
1949年には中国の人口は5億5000万人だった。国連人口部によると、毛沢東が中国を支配した1949年から1976年に中国では7億人が生まれた。1970年から1976年にかけて、合計特殊出生率は半分になった。鄧小平がひとりっ子政策を実行した頃には、人口の伸びはすでにゆるやかになっていた。
中国の人口データはUN-Pop[1]と中国の年次人口を再調査したSheng Luo (1988)を基にしている。中国の人口の変化はこちらからアニメーションで見れる。
1800年以来すべての国で出生率が低下していることについては、こちらの動くチャートを見てほしい。
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カトリック教徒による避妊具の使用 (P276)
第9章固定リンク
「カトリック教徒が多数派を占める国における避妊具の使用率が60%」というデータは、ARDAによるNational Religion Datasetを参考にしている。こちらは各国の人口比をもとにデータを調整した。また、世界全体の避妊具の使用率はUN-Pop[9]を参考にしている。
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安全な中絶 (P278)
第9章固定リンク
国連人口基金が発表した、安全な中絶処置へのアクセスに関する報告書には、次のように書かれている:
「法的に禁止されていようと、中絶がなくなることはない。中絶がさまざまな条件下、または一部の条件下で認められている地域よりも、中絶に厳しい地域のほうが中絶率が高くなる。(中略) 特に取り締まりが厳しい地域では、危険な中絶処置が行われる確率や、中絶による死亡率も高くなる。また、法律が厳しくなればなるほど、安全な中絶処置を行える施設の数も減る。すると、安全な中絶を行えるのは、都会に暮らす人や、中絶が認められている地域に旅行できる人に限られてしまう。これは格差を広げることになる。」
「安全な中絶処置を受けにくくすれば、危険な中絶と望まない出産が増えることになる。危険な中絶によって女性が死亡したり病気になったりするのはほぼすべて、中絶が法律によって厳しく制限されているか、現実的に中絶が受けられないような国で起きている。」
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第10章: 焦り本能
道路封鎖 (P288)
第10章固定リンク
David L. Heymann (2014)はネイチャー誌にて「道路封鎖は感染症の流行を止めるのに役に立たない」と語った。エボラの流行について、彼はこう書いている:
「アフリカでよくある脆弱な道路封鎖は、過去の感染症の流行を止めることはできなかった。今回も失敗するだろう。 たとえば1995年のコンゴ民主共和国では、軍が感染症を止めようとキクウィトを包囲した。しかし、感染者は丸木船で包囲網をくぐり抜けてしまった。軍は道路は封鎖できたが、クウィル川に続く森の道は封鎖できなかった。」
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いつやるか?いまでしょ! (P290)
第10章固定リンク
よくある営業の手口に騙されてはいけない。そうした手口ついては、ロバート・チャルディーニ著『影響力の正体 説得のカラクリを心理学が あばく』(2013年、岩田佳代訳、SBクリエイティブ)に詳しい。
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焦り本能についての関連書籍 (P290)
第10章固定リンク
対極にある2択で物事を考えたり行動したりするのは生存本能のひとつだ。たとえばサバンナに暮らす動物は、天敵に襲われないように、「行くべきか、行かないべきか」といった判断を常に行っている。イエスかノーか、右か左かといった一瞬の判断が生死を分ける。同じく人間も進化の過程で、最も生き延びやすい選択肢をとっさに選ぶ本能が身についた。
しかし、多様な選択肢から選ぶよりも、イエスかノーか、右か左かといった2択だけに絞ってしまうことが多い。そういう意味ではサバンナの動物とあまり変わらない。この本能は大昔は役に立ったかもしれないが、いまはそうでもない。「イエスでもノーでもない」といった、より現実的な選択肢を考える妨げとなっている。
焦り本能について詳しくはテトロックとガードナー著『超予測力─不確実な時代の先を読む10カ条』(2018年、早川書房、土方奈美訳)を参考に。
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GDPと二酸化炭素排出量の最新データ (P296)
第10章固定リンク
経済協力開発機構は、加盟35カ国のデータを定期的に発表している。2017年12月時点で、最新のGDP成長率のデータは、6週間前に更新されたものだった。それなのに、二酸化炭素排出についての最も新しいデータは3年前のものだ(OECD[2]: Air and GHG emissions: Carbon dioxide)。2014年から、スウェーデンでは環境経済勘定(SCB)のウェブサイトで、直近3カ月以内に更新された二酸化炭素排出データを見ることができる。
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温暖化: 単純化と最悪のシナリオ (P297)
第10章固定リンク
すべての問題の責任を温暖化というひとつの原因になすりつけるのは悪い癖で、これが「温暖化責任論」と呼ばれるものだ。ただし、地球温暖化を否定しても問題は解決できない。これまでも歴史の中で人々が新しい環境に適応してきた多くの事例を念頭に置きながら、これから人間が温暖化とどのように共生していくかを現実的に予測したほうがいい。地球温暖化は、他の課題と同じように考えるべきだ。
Smilは著作“Global Catastrophes and Trends” (2008)にて、「地球温暖化は複雑すぎて、たったひとつだけの結果をもたらすとは言えない」と語っている。彼によると、地球温暖化がひとつの巨大な災害を起こす可能性は少ないが、ゆっくりとして誰も気づかない変化をもたらす可能性も少ない。地球温暖化がもたらす変化は、「早い」と「ゆっくり」の中間になる可能性が高い。
地球温暖化以外にも、食料やエネルギーでも同じことが言える。Ruth DeFriesは著作“The Big Ratchet(2014)”にて、人類史における食料とエネルギー消費の転換点について描いている。DeFriesは、化学肥料を使い続け、自然を破壊し続けるのは持続的ではないと論じている。だが、それによっていつか巨大な惨事が起きるという話はしていない。
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温暖化難民 (P297)
第10章固定リンク
地球温暖化によって難民の数が劇的に増えると主張する研究は多い。イギリス政府科学庁が行った「移民と地球環境変化についての研究」(Migration and Global Environmental Change (Foresight, 2011))によると、このような主張のもとになっている共通前提そのものに基本的な欠陥があることが示されている。
まず、前提として頻繁に引用されている研究は2つしかない。ひとつは地球温暖化によって1000万の難民が生まれるというもの。もうひとつは1億5000万の難民が生まれるという推定だ。Box 1.2: “Existing estimates of ‘numbers of environmental migrants’ tend to be based on one or two sources.”を参照。
次に、この前提となっている研究は、レベル1と2にいる人々の環境適応能力を過小評価している。人々が地球温暖化に適応するのではなく、移動するしかないと結論づけている。
国際的な移民と難民の事実を知りたい方は、UNHCR(国連難民高等弁務官事務)による人口統計を参照のこと。また、 次の書籍も参考になる: Paul Collier 著 Exodus (2013)、Alexander Betts Paul Collier 著 Refuge (2017)。
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エボラ (P298)
第10章固定リンク
世界保健機構は、2014 年以来のエボラ出血熱のすべての発生事例を記録し報告書を公開している(WHO[13]: Ebola situation reports)。世界保健機構のデータには「感染の疑い」のある患者も含まれる。また、アメリカ疾病予防管理センター(CDC[3])は引き続き、「感染の疑い」のある患者と「感染が確認されていない」患者の両方を含んだ、実際より多めに見える推定患者数を公開している。
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感染症の流行リスク (P302)
第10章固定リンク
スペインかぜのような感染症が再来するとしたら、大規模ではなく小規模になる可能性のほうが高い。詳しくはこちら:Global Catastrophes and Trends: The Next Fifty Years, by Smil (2008). 食肉産業での抗生物質の使い過ぎ(WHO[14]: Antimicrobial resistance)には反対すべきだが、同時にDDTで犯した間違いをふたたび犯さないように注意して、過剰な保護を避ける必要もある。抗生物質がもっと安価に手に入れば、救えた命もあったはずだ。
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金融危機のリスク (P303)
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過去10年間は、外部環境の変動が激しく、特に資本市場は極端な出来事による変動にさらされてきたとリチャード・ドブスらはNo Ordinary Disruption(2016 p88)にて書いている。
Ricardo Hausmannの"How Should We Prevent the Next Financial Crisis?" (2015)という記事によると、金融の仕組みは常に変わり続けているので、過去の間違いから学ぶことが難しい。将来の金融危機は、過去の金融危機とは似ても似つかないものになる可能性がある。多くの国は、危険な融資や投資を規制している。だが、金融規制は国によっては良い手にも悪い手にもなる。Hausmannによると、ラテンアメリカのいくつかの国では、金融規制のしすぎで経済ががんじがらめになっている。
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第三次世界大戦のリスク (P303)
第10章固定リンク
“Global Catastrophes and Trends: The Next Fifty Years (2008)”の中で、10年前に著者のSmilは当時すでに新たな6つの世界的トレンドによって紛争が激化の方向に向かうことを予想していた。その6つのトレンドとは、ヨーロッパの地位、日本の凋落、イスラム教の選択、ロシアの方向性、中国の台頭、そしてアメリカの後退だ。 これらは“Dominance and Decline”という章に書かれている。最も危惧すべきなのは、中国が台頭してきたときに、プライドが高いヨーロッパがどう反応するかだ。
スウェーデンは大英帝国に侵略されなかったが、未来永劫侵略されないとは限らない。たとえばイギリスは、つい35年前にもアルゼンチンとフォークランド諸島をめぐって紛争を起こしている。Laycock著“All the Contries We’ve Ever Invaded”を読めば、第三次世界大戦が起きた時、ヨーロッパは被害者ではなく加害者側にまわるのでは、とも思える。(訳註: この本によると、イギリスが過去に侵略したり紛争を起こした国の数は171カ国にものぼる。)
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地球温暖化のリスクと天然資源の濫用 (P304)
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Smilは著作“Energy Transitions” (2010)にて、化石燃料依存からの脱却は人類にとっては難しい目標だとしている。そうでないと願いたいが、Smilは二酸化炭素の排出が劇的な速度で減ることは考えにくい理由を整然と説明している。地球がどうなるかは予測が難しいが、人のマクロな行動パターンはある程度予測がつく。大惨事が起きない限り、人類は手遅れになるまで化石燃料に依存し続けるだろう。
ポール・コリアー著『収奪の星─天然資源と貧困削減の経済学』(2012年、村井章子訳、みすず書房)には、さまざまな天然資源と、人類がそれらをどのように収奪し続けてきたかが記されている。「これ以上は無理」となるまで収奪は続くが、そうなった時には手遅れだ。
また、OurWorldInData[7]や、経済学者のエリノア・オストロム著“Governing the Commons” (1990)も参考になる。オストロムは、遠く離れた場所に暮らす人類が、いかにして共通の資源を濫用しないように努めてきたかを記している。詳しくはWikipediaを参考のこと。
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極度の貧困のリスク (P305-307)
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極度の貧困のリスクについては、次の情報源を参考にした:
- 世界銀行(WorldBank[26])
- 海外開発研究所(ODI)
- ポール・コリアー著『最底辺の10億人─最も貧しい人のために本当になすべきことは何か』(2008年6月、中谷和夫訳、日経BP社)
- BBCのドキュメンタリー番組“Don’t Panic—End Poverty” (Gapminder[11])
オスロ国際平和研究所の暫定的なデータによると、極度の貧困は減っているが、紛争地帯に暮らす極度に貧しい人の数は変わらないか、増えている。現在の紛争が長引けば、極度に貧困な子供たちの大多数はこれからも紛争地帯から抜け出せない。
これは国際援助団体にとっては難題だ。ストックホルムで2016年に行われた「第1回平和構築と国家建設に関する国際対話」(International Dialogue on Peacebuilding and Statebuilding)では、紛争地域における極度の貧困のリスクと、それを支援する難しさについて言及された。
本書で紹介した他の4つのリスクはまだ先の話だが、極度の貧困は今まさに起きているリスクだ。現在、極度の貧困に暮らす人のうち、78%は極度に貧しい地域の小規模農家だ。また、極度の貧困層のふたりにひとりは子供だ。
訳者による補足: 極度の貧困についての世界銀行による日本語の説明はこちら。
· 詳細(準備中)
第11章: ファクトフルネスを実践しよう
ビジネス (P318)
第11章固定リンク
世界はひとつの市場になり、サービスや製品はより自由に取引されるようになった。トーマス・フリードマンは著書『フラット化する世界』(2010年、日本経済新聞出版社)にて、ビジネスや働き方、そして未来についてのこれまでの常識が当てはまらなくなったと書いている。一方、ファリード・ザカリアは『アメリカ後の世界』(2008年、徳間書店)にて、「グローバル化はまだはじまったばかり」と説いている。彼によると、
- レベル2の国への生産移転は加速するだろう。質を落とさずにコストを半分にできる。織物産業はヨーロッパからバングラデシュやカンボジアに移った。バングラデシュやカンボジアがレベル3に近くにつれ、ケニアなどのアフリカ諸国が台頭してくるはずだ。
- 現在、ガーナ、ナイジェリア、ケニアは投資先として最も有望な国々だ。
『フラット化する世界』と『アメリカ後の世界』にはハッとさせられた。また、わたしと同じように世界を見ている人がいることに勇気づけられた。ちなみに、『アメリカ後の世界』を書いたファリードはわたしを研究室に招待してくれた。そこでは中国がレベル4の国に追いつきつつあること、一方で中国の農村部がとても遅れていることは懸念すべきだと伝えた。
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経済の多様化 (P319)
第11章固定リンク
マサチューセッツ工科大学は、既存の産業とスキルを使って国家が収入源を多様化することを助ける無料ツールを開発した。また Hausmann et al.(2013)も参考になる。
· 詳細(準備中)
スペルミス (Speling mistakes) (P320)
第11章固定リンク
原書ではこの綴りはわざと間違えている。東洋の絨毯には少なくとも一カ所は意図的な乱れがあるという話に発想を得てのことだ。どの絨毯も結び目の少なくともひとつはわざとほつれがある。この話は、わたしたちが人間であって完璧な存在でないことを思い起こさせてくれる例だ。もちろん、この豆知識にはわざと出典をつけていない。
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ローカルな知識不足とデータ (P322)
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アラン・スミスのTEDトーク『統計を好きになるべき理由』をぜひとも見てほしい。スミスはイギリスでの勘違いの事例をあげている。ギャップマインダーでは、地域の人口動態が目でみてすぐにわかるような動くマップをつくりをはじめている。こちらのリンクの再生ボタンをクリックすると、ストックホルムの人口ほとんどが豊かになり、教育程度が上がっていることがわかる。一方で、ストックホルムの政治議論を聞いていると事実とは逆に格差が広がっているように感じてしまう。
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最後に
最後に: グローバルな開発に関する無料データ
最後に固定リンク
この本を書けたのは、開発に関するデータや研究内容を無料で手に入れることができたからだ。1999年、世界銀行はそれまでで最も包括的なグローバル統計をCD‐ROMの形で発表した。それが、「世界開発指標」(“World DevelopmentIndicators”)だ。
わたしたちはCD‐ROMの中身をわかりやすくバブルチャートにして、ウェブサイトに載せた。世界銀行は少しおかんむりだったが、人々は納税という形でデータの料金を支払っているので、中身を公開しても許されるはずだと思っていた。すでに人々のものであるデータを、わたしたちが見やすくしただけだ。それに、「グローバルな市場が適切に機能するには、人々が情報に無料でアクセスできた方がいい」ということに世界銀行も賛成してくれるはずだ。
2010年、世界銀行はすべてのデータを無料で公開することを決めた(わたしたちが無料データにこだわっていたことにも、感謝してくれた)。2010年5月に世界銀行のオープンデータ・プラットフォームが公開された時にはわたしたちも祝典に招かれて講演した。それ以来、世界銀行は信頼できるグローバル統計についての主要な情報源になっている。その時の動画はこちら。
こうした情報の無料公開が可能になったのはすべて、ティム・バーナーズ・リーをはじめとする、無料インターネットを推し進めてくれた初期のビジョナリーたちのおかげだ。
ティム・バーナーズ・リーは、ワールド・ワイド・ウェブを発明したしばらくあとにわたしたちに連絡をくれて、つながりあったデータ網が開花する様子を描いた(美しい花の画像を使って)スライドを貸してほしいと言った。わたしたちはすべてのコンテンツを無料で公開しているので、「もちろんお使い下さい」と答えた。ティムはその「花のパワーポイント」を2009年のTEDトークで使って、人々に「次世代ウェブ」のイメージを見せた(その動画はこちら)。また、複数の情報源から集まったデータがひとつになると何が起きるかという例として、ティムはギャップマインダーを使っている(Berners-Lee(2009))。ティムのビジョンは非常に大胆で、わたしたちはまだその初めの段階しか見ていない。
残念ながら、この本では国際エネルギー機関のデータはほとんど使っていない。経済協力開発機構も、国際エネルギー機関も、納税者によって支えられているのに、まだ有料のデータが多い。エネルギーについての統計は極めて重要だ。人々が入手しやすいようにそのうち無料化すべきだし、いずれそうなるものと思っている。
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